最初は磨き。最後は愛情。
FROM INSIDE #16 プロが魅せられた“ゼロフィニッシュ”

“ニンジャ”チューンで信頼を集めてきた
モリヤマエンジニアリング代表、森山光明さん。
減少一途のGPZ900Rのミントコンディションを維持するために
ゼロフィニッシュはいかに使うべきかを話してもらった。

ラジコンとモンキーでドロ沼に

横浜は港南区、広い環状2号線沿いに「モリヤマエンジニアリング」はある。店内の作業ピット、そのスペースにところ狭しと並べられた多くのツール類に圧倒される。数とバリエーションが半端ではない。

「もともと工具が大好きなんです。気になったものはすぐに買って試すし、『これいいな!』と思うとまとめ買いしてしまう悪いクセも(笑)。ツールのクオリティは、ブランドの有名無名や高価安価とはまったく関係ありません。パフォーマンスはそれらの“神話”に必ずしも比例しないんですよね。そこがまた面白いんです」

ニンジャ。カワサキGPZ900R/750R。そのチューンナップで世に広く知られるモリヤマエンジニアリング代表、森山光明さんの話はとても面白い。思わず引き込まれ、その先がもっと聞きたくなってしまう。

そんな森山さんの、かつての少年時代を彩ったのがホンダ・モンキーだった。話をさかのぼろう。場所は熊本の田舎町。その後大好きになる機械いじりは、新聞配達のアルバイトを頑張って貯めたお金で買ったラジコンがきっかけでスタートする。

「欲しくて欲しくて、やっと手に入れたそのラジコンはエンジン付きでした。大興奮して手にしたことを今でもはっきり憶えています。同じタイミングで近所の小さなラジコンショップに出入りするようになり、エンジンという魔法の装置の果てしないパワーにすっかり魅せられてしまいました。

それからは飽きもせず……そして勉強もせず(笑)、ラジコン三昧の日々です。電気モーターのラジコンにはなぜか興味は湧きませんでしたね。内燃機関ばかりに興味が惹かれました」

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内燃機関へのリスペクト

そんな森山少年は中3のときに、兄の友人に中古のモンキーを15000円でゆずってもらったという。

「このモンキーが、わたしの人生を決定的に“ある方向”へと導きました。もちろん当時はそんなこと予想もしませんでしたけれど、それくらいモンキー改造へのハマり方は尋常じゃなかったんです。

世間は2ストロークエンジンを搭載したレーサーレプリカが全盛で、でもわたしは4ストロークが好きだった。理由は……4ストの方が、仕組みが複雑でメカっぽかったから(笑)。寝ても覚めてもモンキー、モンキー……高校の放課後に稼いだアルバイト代はすべてカスタムに費やしました」

当時の森山さんを激しく衝き動かしたのは、「手のひらサイズの、こんなに小さなピストンがなぜ大きな自分を運んでくれるのか?」というかつて経験したことのない、震えるようなキモチだった。

「内燃機関への感動は、今もまったく変わっていません。ガソリンエンジンの湧き上がるようなパワーの源は一体どこにあるのか? どうしてガソリンだけでどこまでも走っていけるのか? その根源的な不思議さに心を奪われてしまいました。エンジンって、凄い」

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人生唯一のバイク不在期間

ひとたび没入するとわき目も振らず、が森山さんの性分のようだ。社会人になった19歳のときに買ったB110サニーは、現在もチューニング中というから驚きの粘り腰だ。

「自動車整備士の免許を取って、最初の就職先もバイク屋に決めました。当時は自動車製造関係の求人が多かったけれど、ピンと来たのはやっぱりバイクでしたね。地元九州・鹿児島から上京、横浜のショップに6年間勤めました。でもそのときはとても貧乏で、バイクなんてぜんぜん持てませんでした」

バイクが好きで二輪ショップに就職したのに、かたやそんな体たらく。こなた時代はバブルで大盛り上がり。人生で唯一のバイク不在期間が、20代の森山さんを次のステップへと推し進める。

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最初は軽トラの流しからだった

ニンジャカスタムで有名なモリヤマエンジニアリングが、オープンした当初は軽トラ1台ではじめた“流し”のショップだった……と聞いたら読者のみなさんはどう思うだろうか。でも実際、26歳のリスタートは無店舗から出発した。

「店名は現在と同じ、最初から『モリヤマエンジニアリング』で事業を開始しました。軽トラのドアにももちろんそのまま書いてありました。動くモリヤマエンジニアリング……流しのバイク整備屋さんです(笑)。

まず解体屋で車検の残っている軽トラを10万円で買ってきて、あとは手持ちの安物工具を積んだだけの移動バイク修理。プリントごっこで刷ったチラシを一所懸命にエリアに撒き、ポケベルを唯一の連絡手段にしてなんとか開業にこぎつけました。

いささか怪しい営業スタイルでしたが、目のつけどころが良かったのか、『家まで来てパンク直してほしい』『放置しちゃってエンジンがかからないからなんとかして』というような依頼がけっこうあったんです。午前中に3件こなせば午後は遊べて、しかもバイクショップのスタッフのときよりも収入もいい。……ヨシ、これはイケる! ってね」

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“足りない”旧車が大好きだった

基本的にはフリーランスなので、時間も融通がきいたらしい。仕事の空いた時間をうまく利用して森山さんは、二輪/四輪関係なく業界の先輩メカニックたちを訪ねまわったという。さまざまなショップに顔を出しては、「ふ~ん、そこはそんなことになってるんだ……」とさりげなく技術を“見学”したのだ。

そんな折、流しのメカニックとして信頼を得た森山さんにのもとには「バイクが欲しいんだけど」というオーダーがだんだんと増え始める。

「これはチャンスだと思い、店舗を間借りしながら徐々にお客さんを増やしていきつつ、自分の店を持つところまでなんとかこぎ着けました。

ニンジャについて言えば、個人的に大好きだから入れ込んでいる。ただ、それだけなんです。弱点のない最新型よりも、足りない旧型マシンが好き。ニンジャにはカスタムの余地と伸び代がたくさんあるんです。

潜在的なポテンシャルをうまく引き出して、パワーに勝る最新型をズバンとブッチ切りたい(笑)。でも最近は、ノーマルのニンジャも同じくらい手間をかけて大切に整備しています。ノーマル車両にしかない、無二の価値を痛感することも増えました」

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すべてのコンディションは外装から

カワサキGPZ900R/750Rはもっとも古くて37年、新しくても18年選手。そんなニンジャは立派な旧車だ。それだけに整備はイージーじゃない。

メーカーから供給される純正パーツに限りがある状況でも、時間と手間をかけてコンディションを整えてくれる優秀なメカニックを確保していること。そのむずかしさと付き合い、上手に折り合いをつけられること。そんな人だけがニンジャオーナーになれる。

森山さんに、もっとも簡単で上手な旧車との付き合い方について教えてもらった。

「ニンジャ乗りに限らずすべての旧車ライダーに伝えたいのは、愛車のコンディションを整えるためにするべき最初の、かつもっとも大事なことは……外装を美しく維持することです。そこからメンテナンスの基本はスタートしますし、それがすべてと言っても過言ではありません」

シュアラスター ゼロフィニッシュのような高性能なケミカル剤があれば、それほど難しいことではないはずですと森山さんは言う。

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ゼロフィニッシュの使いどころとは?

「汚れを落とし、艶を出す。まずはそれでだけでいいんです。意外に思われるかもしれませんが、ニンジャオーナーさんも半数の方はキレイに車体を維持しているものの、もう半数はそれほどでもありません。それが実態です。

たしかにフルカウル車ですし、ビッグバイクゆえボディ面積も広いのでクリーンナップは面倒です。しかし屋外を走るものだから、走った分だけ汚れは確実に付着していきます。クランクから上は電装類が多いのであまり水はかけない方がいいですが、それより下は大丈夫ですのでしっかり水で洗ってください。そして美しく磨きましょう。それだけでメカトラブルははっきりと減るはずです」

森山さんはさらに加える。

「フロントブレーキから発生するブレーキダストも塗装にダメージを与えます。付着したダストが湿度と反応してサビを発生させるんです。日ごろからカウルの中も、ゴミを除去してちゃんと磨いておけば、そんな事態もきっと回避できます。シュアラスターのようなガラスコーティング剤でフィニッシュさせておけば理想的ですね」

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ゼロフィニッシュは金属との相性もいい

塗装面だけでなく、森山さんはメタルパーツにもガラスコーティングには相性が良いと続けた。

「チタン製マフラーやメッキが施されたマフラーにもゼロフィニッシュは有効です。明らかに手垢などが付きにくくなりますので、金属パーツならではの美観が保てる。しかも塗り広げるときの使用感は、まるで水のように軽快なのでストレスがまったくありません。このライトでスムーズな施工リズム……使い勝手がめちゃくちゃいいですね」

森山さんのショップのお客さんのひとりは、3時間走ったあとは3時間かけて磨くという。カウル類は走るたびにすべて外し、徹底的にブラッシュアップするという。

「そのオーナーさんのニンジャは、どの年式のニンジャよりも美しくキープされています。クリアのスクリーンの透明感もパーフェクト。最後は結局、愛情ですね」

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根っこにあるものは何も変わらない

ニンジャと言えば……でその名が挙がるまでに有名になった森山さんだが、その心根は、モンキーのあの頃とさほど変わらないように見える。

「ないものは自分で作りたいので、オリジナルのニンジャ用パーツもこれまで企画していっぱい作りました。パーツを作るって、やっぱり簡単じゃない。試行錯誤の連続で、なかなか出口が見えないことばかりです。

でも昔から『作りたい!』って欲求のほうが勝っているから、それを苦労と思ったことは一度もありません。オリジナルのアイデアを盛り込んだ、例えばニンジャ用のホーン移動ステーや水対策ヘッドカバーのような自分らしいオリジナルパーツが出来たときの満足感は格別ですね」

自分で発想するところからスタートするモノづくりほど楽しいものはない。そう言い切る森山さんの横顔は、静かに凛々しい。

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photo:高柳健 text:宮崎正行

記事で紹介されたアイテム

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ゼロフィニッシュ
マイクロファイバークロス

取材協力:MORIYAMA ENGINEERING

GPZ900Rカスタムの世界ではその名を知らぬ人がいない、ニンジャの名チューナーとして有名な森山光明氏が営む二輪ショップ。お客さんの意向をヒアリングしつつ、令和の今だからこそ提案できるノーマル/ファインチューン/ハードカスタムそれぞれの美点へのコメントはさすがのひと言。追い込んだプロならではのトークが聞きたければ、ぜひ横浜の地を訪ねてほしい。1989年創業。

横浜市港南区下永谷5-4-3 ▲045-821-3403
www.moriyama-eng.info

営業時間:10~19時
定休日:水、第三木曜日

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