「EXECTIVE’S Choice――ゼロフィニッシュだけあればいい!」Vol.12
モータージャーナリスト&ライディングインストラクター・柏 秀樹さん

ベテランジャーナリストで、ライディングスクールの講師も務める柏秀樹さんは、ちょっと独特の存在だ。

オン・オフにかかわらず、レース経験のあるモータージャーナリストが多いなか、柏さんはこれといったレース経験はない。なのに、パリ~ダカールをはじめ、海外ラリーに何度も参戦している。

そして、バイク雑誌などの媒体の仕事をする以外に、ライディングインストラクターとして「KRS柏ライディングスクール」代表兼講師も務めている。いまでは、こちらのほうが柏さんの代名詞であり、主たる仕事になってもいる。

また、柏さんに会ったことがある、あるいはトークショーを聞いたことがある方ならご存知だろうが、会話のなかには必ずと言っていいほどおやじギャグがちりばめられる。

おふざけが好きな方なのかと思いきや、実は思慮深く論理的で、物事の真偽や妥当性なども徹底的に究明するのがお好きだ。

こう書くとなんだかとらえどころのない方のように思われるかもしれないが、そうではなく、もはや業界の大御所と呼ばれるようなベテランでありながら、常にとても自然体でいるお方なのだ。

柏秀樹|ライディング講師|モーターサイクルジャーナリスト

マシンガンのように言葉を放つのが柏さん流。熱が入るとそれに身振り手振りが加わってくる。

柏さんと筆者のお付き合いは30年近くに及び、なんとなく柏さんの考え方も推察できる。なので、おそらく、ゼロフィニッシュにはすぐに興味を惹かれるはずだと思った。

柏さんにお会いしてゼロフィニッシュの説明をすると、案の定、すぐに興味津々の顔つきになって、早速使用してみますとのこと。

それから3週間ほど経って、使用した感想を聞くために柏さんの家に向かった。

片岡義男との出会いで人生の方向性が決まった

柏さんのプロフィールには、この業界に入ったきっかけは、柏さんが大学院在籍中に小説家の片岡義男さんとバイクのエキゾーストサウンドを収録したLPレコードを制作したこと、と必ず書かれている。

80年代初頭から、バイクブームの盛り上がりとともにバイクサウンドのLPレコードがたくさん発売されたが、その草分け的存在がこの柏さんと片岡さんの共作で1979年に発売された「W1 TOURING」だったが、今回、その制作に至る経緯を聞いて驚いた。

片岡義男さんが好きだった柏さんは、彼のラジオ番組に愛車だったホンダ・CB450について書いたハガキを投稿したところ、「これは面白い」と柏さんに片岡さん本人から電話があり、その後、家まで訪ねてきてくれて、そのラジオ番組に柏さんがゲストとして出演することになったのだという。

そしてそれが縁で、共同でバイクの音を収録したLPレコード制作を行ったのだが、このLPレコードが売れに売れた。

そのLPレコードのPRなどでバイク雑誌の編集部に出入りするようになった柏さんは、編集スタッフからバイクが好きなら雑誌の仕事をしないかと誘われるようになり、その仕事がどんどん忙しくなっていった。

雑誌|バイク

片岡さんと「W1 TOURING」のほかにも何枚か、バイクとクルマのLPを制作したほか、柏さんは数多くのバイクのサウンドトラック制作に携わった

当時、駒澤大学の大学院博士課程の学生で、そのころすでに出身地である山口県のある大学の会計学の講師として就職が決まっていたのだが、大きく方向転換してフリーランスのジャーナリストになることを決めたのだという。

片岡義男さんとの出会いがなければ、柏さんはバイク好きないちライダーのままだったかもしれない。

大学の卒業記念に3000円で買ったスーパーカブで北海道を一周

物心ついた頃、柏さんの家には外車(スチュードベーカー)があった。1960年代に家に外車があるのはとても珍しく、お父さんが大のクルマ好きだったことがうかがわれる。

そんなお父さんの影響で、小学校5年生の頃には見様見真似でクルマの運転を覚え、家の周りを三菱・コルト1000でグルグル回って遊んでいたという。

そんな柏少年とバイクの出合いは、16歳のとき、友人がホンダ・CB350に乗って柏さんの家に遊びに来たときのこと。友人に頼んで乗せてもらったCBでバイクの楽しさを覚えた柏さんは、バイクショップの裏に捨ててあったホンダ・スーパーカブを500円で譲ってもらってライダーデビューを飾る。

ただ、そのスーパーカブでフラットなダート路面を見つけてはリヤタイヤを滑らせながら走らせる、ダートラ走りを楽しんでいたというのだから、現在の柏さんのルーツはそこにあるのかもしれない。

その後も、バイクに乗り続けた柏さんだが、大学時代は勉強に集中していて、それほどバイクの思い出はないという。しかし大学の卒業記念に、今度は3000円で購入したスーパーカブで3週間の北海道一周の旅に出かけると、バイク熱が再燃。同じアパートに住む友人から、ホンダ・CB450を購入する。

そう、片岡義男さんと出会うきっかけになったバイクである。

HONDA|CB450 |柏秀樹

「W1TOURING」のサウンド収録のために行った西伊豆ロケ時にW1SAにまたがる柏さん。W1Sのマフラーをセットしてサウンドを収録したそうだ。

スズキ・竜洋テストコースでの大転倒で多くのことを学んだ

前述のように、片岡義男さんとのLPレコードを作ったのがきっかけで、バイク業界に足を踏み入れた柏さん。当時は第二次バイクブームの真っただ中で、ホンダとヤマハのシェア争いであるHY戦争が起こるなど、バイク雑誌を含むバイク関連の仕事は山ほどあり、忙しい日々を過ごしていたが、1984年、竜洋テストコースで行われたアルミフレームを採用したスズキ・GSX-R(400㏄)の試乗会で、大きなアクシデントに見舞われた。

国際ライダーではないけれど、それなりのスピードで走れるようになっていた柏さんは、竜洋テストコースの第1コーナー後のヘアピン立ち上がりの高速左コーナーで大クラッシュ! 後年まで語り継がれるような派手な転倒をしてしまった柏さんは、そこで何も考えずにただ走っているだけだった自分のアホさ加減に気づいたのだという。

それからの柏さんは、骨格と筋肉をどのようにリンクさせたら正確で疲れない走りができるのか、脱力と連動させる呼吸管理法など、ライディング時の脳と身体の動きを理論づけて考えるようになったという。

この大クラッシュも、柏さんによって、ライダーとして、ジャーナリストとして進化する大きな契機だったが、それから10年くらいのち、再び大きな契機が訪れた。

大型バイク専門誌の「BiG MACHINE」(内外出版社発行・現在は休刊)で始まった連載ライテク企画「ビッグマシンを自在に操る」が大ブレイク! その連載記事をベースにした柏ライテク特集号(2000年1月号)は完売してしまったのだ。

柏さんといったらライテク、ライテクといったら柏さんという定評がこの頃から付き、現在の「KRS柏秀樹のライディングスクール」の活動に結びついていくのである。

柏秀樹|ビッグマシン|バイク雑誌

BiG MACHINE誌に連載した「ビッグマシンを自在に操る」は、当時、一大ブームだった大排気量バイクを持て余し気味だったユーザーの心を鷲掴みにした。そして、その連載の総集編はヤマハ・YZF-R1をフルバンクでUターンさせる表紙写真のインパクトもあって「完売」となった。同じ題名のDVDシリーズも、計5本で4万5000本以上のヒット作となった。

片岡義男さんとの出会い、竜洋テストコースでの大クラッシュ、そしてビッグマシン誌でのライテク記事の連載と、3つの契機を見事にジャンピングボードにして、柏さんは常に第一線で活躍を続けてきているのである。

ニオイがないのがとてもいいですね

「使っていて気が付いたことは、ニオイがない、無臭なのが大きなメリットだということ。家の中やガレージで使ってもニオイが残らないし、エキパイに使った後にエンジンをかけて走ってもイヤなニオイが漂ってくることもありません。これ、とても大事なことだと思います」

ゼロフィニッシュ|施工|DUCATI|ムルティストラーダ

ドゥカティ・ジャパンからテスト車両として長期貸与されているムルティストラーダV4の各部をゼロフィニッシュで磨いてもらった。

「ニーグリップ部に筋状のしつこい汚れが付いていたんですが、何度か繰り返して拭き上げたらキレイに消えました。拭いた後も滑らないので、ニーグリップ部に使っても安心ですね。また、黒い樹脂の部分も拭き上げた後にテカテカしないで、しっとり輝くのもいいですね。大人な感じです。ドゥカのようなプレミアムバイクには、そういうところも大切です」

ゼロフィニッシュ|施工|DUCATI|ムルティストラーダ

宮城県のスポーツランドSUGOまで自走で行ったというムルティストラーダV4のニーグリップ部に付いたしつこい筋を、丁寧に磨き上げる。施行後も「滑らないのがいいですね」。

自らをケミカル大好き人間だと言う柏さん。いままで、数限りないケミカルを使ってきた。

「一応、雑誌などにも出ているし、ライディングスクールの講師として生徒さんの前に出ることもありますから、乗っているバイクは常にきれいにしておくようにしています。ゼロフィニッシュはすごく使いやすいし、磨いた後も静電気によるホコリが付きにくくていい感じです。何より、さあ、磨くぞと構えずにサッと磨けるのがとてもいいと思います」

何事も理詰めで考える柏さんならではの観点で、多くの人にゼロフィニッシュを広めていただきたいものだ。

貯金はすべて砂漠に置いてきました

柏さんを語る上で、忘れてはいけないのは海外ラリーへの挑戦だ。

1984年に「ファラオラリー」に参戦して以来、4回の「ダカールラリー」を含め計11回、海外ラリーに参戦している。もちろん、すべてプライベート参戦で、ほぼすべて自費である。

「ラリーのような長丁場を走ると、そのバイクの弱点がよく分かるんです。ラリーの経験から、そのバイクに長時間乗るとどうなのかということが分かるようになりました。自分は経験主義で、経験したことしか言いたくないんです。だから、人がいいと言っても、自分で経験するまではなにも言えないし、言いません」

貯金はすべて砂漠に置いてきましたと笑う柏さんだが、いまでも機会があればラリーに出たいと言う。

柏秀樹|ダカールラリー|パリダカ|Yamaha|tenere|テネレ

忙しい仕事の日々のなかで、丸1カ月以上日本を離れなければいけないラリー。それでも柏さんは、自らの経験値を上げるため、また楽しむために計11回も海外ラリーに挑戦したのだ。

「ラリーは楽しいですからね。いまでも機会とお金があれば出場したいし、70歳を超えても出場したら完走する自信もあります」

過酷なラリーでの経験に裏打ちされた柏さんのライディングに対する考えは、多くのライダーの共感を呼び、全国各地でさまざまな形態で開催している「KRS柏秀樹のライディングスクール」は非常に好評だ。

基本形は、横浜の教習所や高速道路のパーキングなどで開催している確実なUターンスキルや、ブレーキング能力を高める基本操作に特化したスクールだが、ビギナーやリターンライダーなどにはパーソナルレッスンも行っている。

柏秀樹|ライディングスクール|ネオパーサ清水|KUSHITANI

老若男女、ベテラン、ビギナーにかかわらず、実にさまざまな人が参加しているというKRS柏秀樹ライディングスクール。ひとりでも多くの人の悩みを解決しようと、柏さんは日々、新たなレッスン方法を考えているそうだ。

ライディングの悩みは人ぞれぞれだから、ひとりひとりにアドバイスをするのが理想的なのだと柏さんは言う。

そして、ライディングスクールとは言いながら、乗る以前の問題を抱えているライダーの悩みにも対応している。

「先日、大型バイクを所有している人から、借りているバイク保管庫への出し入れがどうしてもうまくいかないのでレクチャーしてくださいというオファーがありました。これはとても深刻な問題で、とくに東京のような大都会だと、バイクの駐車場所の問題は非常に大きなものです。出し入れしにくいからだんだん乗らなくなって、しまいには手放してしまうこともあるんです。先日の人のようにボクに相談してくれて、ふたりで解決策を考えられればいいですけど、ひとりで悩んで、しまいにはバイクを手放すなんて悲しすぎます。そういう悩みをお持ちの方は、まずは柏に相談して欲しいと思いますが、それよりも車両メーカーもそこまで考えてあげて欲しいです。乗り続けてもらうための努力を、業界挙げてやっていかないと」

柏さんの視線は、ライテクよりももっと広いバイクライフ全体にまで及んでいるようなので、ライディングを含む、バイクライフでお悩みを抱えていらっしゃる方は、ぜひ柏さんに一度相談してみてください。

コロナ時代にマッチした、実際にバイクに乗らずに悩みを解決できるKRSリモート相談も好評のこと。これからも柏さんはいろいろな新しい方法を考えながら、相談者に親身になって考えて、その悩みを見事に解決してくれるはずです。もれなく、おやじギャグ付きで。

Photo/Shigeru Tokunaga

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取材協力

KRS柏秀樹ライディングスクール

https://kashiwars.com/

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