
FROM INSIDE #06 プロが魅せられた“ゼロフィニッシュ”
目次
NSRラバーズの頼もしい相棒になる
「モトールエンジニア」の藤田浩一氏にシュアラスター・ゼロフィニッシュを託し、その利便性を問うてみた。
「店名であるモトールエンジニアの“モトール”の意味はなんですか?」
そんな質問を最初にしてみた。答えてくれるのは神奈川県藤沢市にショップを構える、オーナーでメカニックの藤田浩一さんだ。
「インドネシア語で“バイク”という意味です。
インドネシア、とくにバリ島が大好きで、いまでもタイミングさえ合えば再訪を繰り返すくらい惚れ込んだ土地なんです。だから店名もインドネシア語。
いったん好きになってしまうとなかなか歯止めが効かなくなるのが、どうも僕の生まれ持っての気質のようです(笑)」
藤田さんは現在、1986年から1999年までに生産されたホンダNSR250Rというバイクのメンテナンスと修理を専門に行うバイクショップを営んでいる。
単一車種をもっぱら扱う個人店
……そんな触れ込みを聞いただけで、強固なこだわりを意固地なキャラクターの真ん中に据えたカタブツ(失礼!)を思わず想像してしまうかもしれないが、それはまったくの勇み足。
ご本人にお会いすれば、そんな先入観はすぐにどこかへ飛んでいってしまうだろう。
藤田さんはゆっくり、ていねいに、言葉を選びながら静かに話す。前のめりなところはいっさいない。


キッカケを与えてくれた本があった
そこまで藤田さんが惚れ込んでしまった「エヌエスアール」というバイクがどんなバイクかを簡単に説明しよう。
オートバイやスクーターが売れに売れたバブル往時、1980年代。そのバイクブームの中心にあったのがホンダNSR250Rだ。
もちろん人気のバイクはNSR以外にもたくさんあったが、レーサーレプリカと呼ばれたジャンルの車種の中でもっとも人気を集めたのがNSR250Rで、250ccのそのカテゴリーでは抜きん出た販売台数を誇ったトップセラーだった。
ここでは多くの文字を費やさないが、人気の理由のもっとも大きなものに圧倒的な走行性能(限界パフォーマンス)の高さと、居丈高なイメージを裏切るフレンドリーさが挙げられる。
シンプルに言えば、誰にでもレーシングスピードが比較的イージーに手に入れられる、ということだ。レースを夢見るライダーにとっての憧れの地、サーキット。そんなサーキットへの敷居をどんどん下げていってくれたということに関していえば、NSRや同時代同クラスのライバル車であるヤマハTZR250、スズキRGV250ガンマなどのレーサーレプリカが果たした役割はものすごく大きかった。
そんなNSRに“入れ上げて”しまった藤田さんには、バイクに乗るキッカケを与えてくれた本がある。しげの秀一の『バリバリ伝説』だ。
この名作マンガをリアルタイムで読みふけった覚えのあるライダーなら、
「そうだろう、そうだろう」ときっとうなづくにちがいない。街の高校生が世界グランプリの晴れ舞台へ駆け上がっていく成長譚は、当時の読者にどれほど夢を与えたことか。藤田さんも夢中になったひとりだった。


もはや過去のバイクではない
少年マンガでバイクに魅せられた10代。
サーキットでタイムを削ることに腐心した20代。
栃木の名門アイファクトリーでメカニックと店長としての研鑽を積んだ30代。
神奈川に自分の城を構えて基盤を築いた40代。
そして52歳になったいま藤田さんは、NSRという稀代のハイパフォーマンスマシンのスペシャリストとして、オーナーたちからの信頼を礎に日々のメンテナンスに励んでいる。
「発売当時でさえ新車はなかなかの高額でしたが、レプリカブームが去ったことで2000年代にはいったんすっかり値落ちしました。
しかしそれも束の間、車両価格は2020年現在かなりのハイアベレージを維持しています。車体コンディションが良ければ100万円なんて安いほうかもしれません。
しかし自分のやっていることと、相場が高額なこととはまったく関係ありません。好きなことだけをやってきたら、たまたまそうなっていたというに過ぎません。ただし客観的に見ても、このさき値段が下がることはまずないでしょう。
30余年前の、あの“熱かった季節”を知っているライダーだけでなく、免許を取って間もない20代の若者も『NSR250Rってカッコいい!』とウチの門を叩いてくれる。
旧車としてふたたび輝き始めた、そんなバイクにNSRはなったんですね。
それはそれで、誇らしいことだと思います」


シュアラスターは別格だった
モトールエンジニアは藤田さんひとりで切り盛りしてるので、こなせる作業量には限界がある。
しかしクオリティを落とすことは絶対に避けなければいけない。そこにこそ、藤田さんのような一匹狼の矜持がある。
「アイファクトリーでのメカニックとしての経験もさることながら、店長としてショップを任されたことの経験によって、人と相対してバイクを売ることの大切さとむずかしさの両方を学ぶことができました。
それはとても、得がたい貴重な経験。そのことがあって、今の自分があるのは間違いありません。
まだ地元にいたハタチのころ、僕には自動車のディーラーでメカニックとして働いていた時期がありました。そのときの先輩メカに教わったのは、『固形ワックスはかならずシュアラスターを使いなさい』でしたね。それ以外はイマイチとまでは言いませんでしたが、シュアラスターのワックスの品質は頭抜けているということを実感として学んだ時期です。
だからシュアラスターというブランド名を聞くと、なんとも懐かしいキモチになりますね(笑)」

ゼロフィニッシュはメリットばかり
そんな藤田さんに、シュアラスターの「ゼロフィニッシュ」をさっそく試してもらった。当時使った固形ワックスとはかなり扱いが異なるスプレータイプの新しいケミカル剤だ。
「まず最初に感じたのは、水はじきが強烈なことです。この撥水力の源がスプレーで『シューッ!』だけとはまったく思えません。
水滴の立ちがいいし、その仕上がりには固形ワックスに近い雰囲気がある。その証拠に、水滴にエアガンで空気を吹きつけると、あっという間にはじき飛ばすことができました。これはとても快感です。
拭き上げるときのフィーリングもスムーズなので苦になりせんし、気持ちよくボディ表面に液体をのばしていける。おまけに汚れまで落としてしまうのだから、僕みたいにひとりでやっている人間にはメリットしかありません。
匂いがないのも気遣いを減らせるのですごくいいですね」

水洗いによる浸水を迂回できる
ではNSRに関してはどうだろうか?
「見てのとおり、全身がカウルで覆われているマシンだけに、使いどころはあり余るほどにあります。だからイージーに施工できるのは本当に大助かりですね。
特にNSRについて言えば、車体の水洗いをオーナーさんにオススメしていません。それには理由があって、マグネシウム製の純正リヤホイールを装着する一部の型式では内部への浸水が起こりやすく、またプロアーム(片持ちスイングアーム)車でもリヤアクスルシャフトの周辺に湿気がたまりやすいので、結露してサビを誘発することがあります。
水に頼ることなくボディのクリーンナップができるゼロフィニッシュは、現役NSRオーナーたちの頼もしい相棒になるのではないでしょうか」
今日もモトールエンジニアのガレージには、型式違いの、何台ものカラフルなNSR250Rが整然と並んでいる。
それぞれ車両が、それぞれのオーナーさんの愛情を受けてそこにいる。
NSRたちはていねいな整備を受けて、そして親元に還っていくのだ。
熱したまま、冷めにくい──。そんな藤田さんのNSR愛と職人気質をもってすれば、藤田さんが生きているかぎり、あなたのNSRは大丈夫。
photo:高柳健 text:宮崎正行
記事で紹介されているアイテム
取材協力: MOTOR ENGINEER

神奈川県藤沢市遠藤2494-1
TEL: 0466-21-7881
モトールエンジニア/20代の頃よりSPやF3クラスのレースに参戦し、その多くをNSR250Rとともに過ごした生粋のNSRフリークである藤田浩一氏が、神奈川県・藤沢市の地にオープンさせたNSR専門ショップ。ノーマル状態を大切にする真摯な姿勢にファンが多く集まる。
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MASAYUKI MIYAZAKI
宮崎正行
人文系出版社・夏目書房、自動車系出版社・二玄社/ボイスパブリケーション(『MOTO NAVI』、『NAVI CARS』、『BICYCLE NAVI』編集部)勤務を経て、編集フリーランスとして独立。オートバイ、クルマの専門誌から一般誌、WEB、広告媒体において幅広くコンテンツを制作する。1971年生まれ。自分のアイデンティティは小中高時代を過ごした中野区にあるとひけらかしつつ、大半の時間を埼玉県で費やす。中途半端に旧いモノが大好き。
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