「EXECTIVE’S Choice――ゼロフィニッシュだけあればいい!」Vol.8
鈴木商店代表・鈴木正彦さん

圏央道・日の出インターを降りて、「つるつる温泉」の案内標識に従って都道184号線を走り、民家がまばらになったあたりの右手に大きな2階建ての建屋が見える。道の右手には川が流れ、左手は山肌が迫る。とはいえ、ここはれっきとした「東京都」である。

建屋の前にはカストロールカラーにペイントされたセリカと真っ赤なアルファロメオ・ジュリアクーペ。なんともマニアックな雰囲気が漂っているが、建屋の中のファクトリーに入ると今度は無数のバイク。小排気量のモトクロッサーに始まり、R1200GSベースのガストン・ライエレプリカやBMW・アーバンGS、見慣れない電動モトクロッサーまである。

そして奥の作業台には、取り外されてメンテナンス作業を待つ数本のリヤサスペンションが置かれ、その横並びには作業用の機械がたくさん並んでいる。

さらに、事務所に入ると、ここにも5台のバイクが並ぶ。ドゥカティ・モンスターやBMW・R1000RR、さらにオーセンティック外装をまといカスタムされたヤマハ・XSR900とBoltカフェ……。ここにあるのは、すべてこのショップ・鈴木オートのオーナーである鈴木正彦さんのもので、この部屋の奥のショールームにはさらに10数台のバイク。BMWのHP4、HP2なんていう希少なバイクの姿も。

バイク好き垂涎の車両が並ぶこれらのスペースを見ただけで、このお店がフツーのお店ではないこと、オーナーの鈴木さんがただものではないと誰もが思い始めるはず。

鈴木さんの腕を見込んで、北は北海道、南は九州から引きも切らずメンテナンスの依頼が舞い込み、毎日のメンテナンス作業の傍らで、休日にはオンとオフ両方のライディングスクールのインストラクターを務め、さらに昨年は自らライダーとして電動モトクロッサー・サーロンのレースに出場。初代チャンピオンに輝くというまさに八面六臂の活躍ぶり。

ちなみに、このショップは「鈴木商店」の一部門で、インストラクターやイベント企画運営は、アウトソーシング事業部で受注している。

「整備、メンテナンスの基本は洗車ですよ。洗車することで、故障を見つけることができたりして、トラブルを未然に防げたりしますから」

前述のセリカもジュリアクーペもR1200GSも、当然のようにピカピカ。取材の数週間前からゼロフィニッシュを試してくださり、好印象をもっていただいたよう。

整備のプロがゼロフィニッシュをどう語るか、とても楽しみだ。

大きな2階建ての建物の前に、カストロールカラーにペイントされたセリカと真っ赤なジュリアクーペ。ガストン・ライエレプリカにカスタマイズされたR1200GSは日本でたった1台の希少なバイクだ

レース前の練習でハイサイドの大転倒→足首の複雑骨折が転機になった

東京都立川市に生まれた鈴木さん。16歳のときに、実家が経営するアパートの住人が乗っていたホンダ・CB250RSに乗せてもらったのがバイクとの出合いだった。

当時は、漫画「バリバリ伝説」が大流行中で、バイクに乗り始めた鈴木少年はすぐに峠小僧になり、ヤマハ・RZ250Rやホンダ・NS400Rで大垂水峠を必死で攻めていたそうだ。

18歳になって興味の中心は4輪になったが、バイクにも常に乗り続けていた。

オイルの卸会社に就職して、用品店等に商品を卸す仕事をしていたとき、得意先のドライバースタンド(現2りんかん)のスタッフに、レースをやらないかと声をかけられた。26、27歳だったというから、かなり遅咲きということになる。

しかし、ここからいまに至る鈴木さんのキャリアがスタートすることになる。

チームドライバースタンドから、97年、98年ともてぎ7時間耐久ロードレース・通称もて耐に出場したのち、レースを続けながらそのチームのメカニックになるとともに、オイル卸会社も辞めてレースをやるのには屋号があったほうがいいと「鈴木輪店(すずきりんてん)」を名乗り、バイクやクルマをいじる仕事を始めた。現在の「鈴木オート」の前身である。

レースでも徐々に頭角を現し始めた鈴木さんは、当時お世話になったチームの方からGP250マシンに乗ることを勧められ、ホンダ・RS250Rで参戦した地方選手権シーズンでチャンピオンを獲得して、翌年、国際ライダーに昇格。全日本選手権のトップカテゴリーで戦うことになったのだが、シーズン開幕2週間前の練習中に大きなアクシデントに見舞われた。

ホンダ・RS250Rでウイニングラップをする鈴木さん。ゼッケンの73は鈴木さんのパーソナルナンバーで、ショップのポリシー「73QUARITY」はこのゼッケンに恥じないクオリティで仕事をするという誓いだ

ロードレーサー時代に獲得したトロフィーが無造作に棚の上に置かれていた

諸事情でホンダ・RSからヤマハ・TZ250に乗換えることになり、なかなか慣れないままの状態で走り始め、ツインリンクもてぎの3コーナーに入って、4コーナーのアプローチでスロットルを開けた瞬間、リヤタイヤがズルっと滑りハイサイドで大転倒。路面にたたきつけられて右足首を複雑骨折してしまった。

さらに追い打ちをかけたのが、車いすと松葉杖の状態で出場したその年の第2戦。走行中に、足首に入っていたボルトが神経に触ってしまい、レース後に入院・手術となり、結局、その年はリハビリに明け暮れ、シーズンを棒に振ることになった。

そして翌年、ケガから復帰して参戦した初戦。決勝では3位に入るものの、レース中にステップから足が外れるし、身体のキレはないしで、鈴木さんはこんな身体では全日本選手権は戦えないと、きっぱりと引退することにした。35歳だった。

まったく走れないオフロードに衝撃。そして、のめり込むことに

レースを引退した鈴木さんは、もうバイクに乗るのも見るのも嫌になり、バイクとはまったく無関係な仕事に就いた。

ここでの仕事ぶりを認められ、関連会社の営業部長に就任。バイクとは無関係の業界で、順風満帆な人生が始まったのだが、ある日、鈴木さんがバイクとの関係を断っているのを知っているロードレース時代の先輩が、心配して「バイクに乗ろうよ」と声をかけてきたので、その誘いに乗って林道ツーリングに出かけた。

ライディングスキルには絶対の自信を持つ元・国際ライダーの鈴木さんだったが、オフロードでは先輩たちにまったくついていけないことに衝撃を覚えた。簡単なヒルクライムすらできないし、1日走ったらヘロヘロになってしまった。悔しくて悔しくて、そしてそこからオフロードにドップリとのめり込むことになる。

オフ車を購入して練習を始めた鈴木さんは、エンデューロの全日本選手権にも挑戦。2年ほどレースに出場し、ポイントを獲得できる実力も得た。そして、オフロードの世界に出合ったことで、現在の鈴木オートの方向性も定まったのである。

まったく走れないというあまりのふがいなさから、鈴木さんはオフロードにのめりこんでいく。そして、そこは元レーシングライダー、練習に練習を重ね、エンデューロレースにも挑戦した

「ロードの人はお金をかけて、バイクをきれいにして、カスタムもするんですが、オフの人のバイクは汚れたままだし、メンテナンスも怠りがちなんです。だから、40代から上のオフ車に乗っている人をメインターゲットにした商売をしようと思いました」

レースをやっている時代、レースサポートなどを行うオートスタジオスキルで働いて、さまざまな整備のノウハウを吸収した鈴木さん、その丁寧な仕事ぶりはターゲット層のライダーに広まって、徐々にショップにお客さんが集まり始めた。

「バイクを預かって整備をするには、大きな建物と広い土地が必要。だからここにお店を構えたんです。都会じゃバイクもたくさん預かれないし、トランポを停める場所にも困りますからね」

時間のかかるサスペンションのオーバーホールも行うから、自然と預かりの車両はたまっていく。さらに、鈴木さんはすべての作業を自分一人で行っているので(いわゆるワンオペである)、おのずと作業終了までにそれなりの時間がかかってしまう。

広いファクトリーには、預かりの車両と鈴木さんの所有車が並ぶ。ここに加えて、事務所とショールームにも何台ものバイクが置かれている

サスペンションのメンテナンスやチューニングも鈴木さんが得意とすること。バイクからリヤサスを外して、遠方から送ってくる人もたくさんいらっしゃるという

「ボクがしていることは誰にでもできる作業じゃないと思っていて、人から弟子を取れと言われるんですけど、そう簡単にできることじゃない。だから、すべてを一人でこなすこのスタイルでやっていて、ボクの技術を頼りにしてくれるお客さん相手に商売をしています。幸いなことに、鈴木正彦を買ってくださる方がたくさんいらっしゃるんです」

お客さんには二輪業界の関係者も多く、信頼して任せられる駆け込み寺的存在として知る人ぞ知るショップとなっている。

バイクをきれいにしておくのは大人の嗜みです

前述のように、鈴木さんは洗車にも一家言もち、お客さんにも洗車してバイクをきれいにしておくように勧めている。当然、鈴木さんが所有するバイクもクルマも日ごろから手入れを欠かさない。

「ゼロフィニッシュは、ひと拭きで薄く広く伸びてくれるところがいいですね。また、汚れを浮かしてくれるところは同様の製品と比べても上だと思います。マット塗装にも使えるし、ギラツキ感もなかなかいいです」

研究熱心な鈴木さんは、同様の他社製品と比較テストも行って、ゼロフィニッシュの勝っているところを細かくチェックしてくださった。

「溶剤臭くないのもいいですね。ショップの中でも気兼ねなく使えます。20台以上のバイクに使ってみましたけど、まだ結構残っていますからコストパフォーマンスも高いです。そして、どこでも購入できるのもいいですね」

とくに、雨の後などはドロドロになってしまうオフ車には、走行前にゼロフィニッシュでコーティングしておけば後始末が簡単になるのでオススメとのことでした。

電動モトクロッサーのクーロンを磨く鈴木さん。オフ車は、走行前にゼロフィニッシュでコーティングをしておくと、泥汚れなどが落ちやすくなる

クルマにももちろん有効だと鈴木さん。伸びがよくて、ムラにならないところがいいとのこと

これからはストリートカスタムに注力。ウエアも含めトータルでコーディネート

鈴木さんが仕事上心がけていることは、お客さんの立場に立った考え方をすることと丁寧な仕事をすること。

だからこそ、全国各地から鈴木さんの腕を頼ってお客さんが集まってくる。

多忙な整備作業の傍ら、インストラクターの仕事もこなす。写真左は、FISCOで開催された自転車のイベントで、鈴木さんはカメラマンをバイクの後部座席に乗せて走行

現在、仕事の割合はオフが7割、オンが2割、クルマが1割。この先は、ストリート・カフェに力を入れたいと思っているそうだ。

「今一番気に入っているバイクは、ヤマハのXSR900。これに似合うウエアも手に入れて乗っています。新しいことをやるには投資が必要で、ボクが持っているバイクはすべて何かしらの理由があるんです」

ストリート・カフェに関しては、バイクをカスタムするだけでなく、そのバイクに合ったライディングウエアも選んでトータルコーディネートを提案したいそうで、壁にはたくさんのウエアが吊るされていた。

鈴木さんがいま最も気に入って乗っているのが、ヤマハ・XSR900。ストリート・カフェ風のカスタムをしていこうと思っている

バイクだけではなく、ライディングウエアも合わせてトータルコーディネートを提案していく

そしてもうひとつ、鈴木さんらしい面白い提案がある。

「映画、ドラマ、CM制作会社、各種メディア、広告代理店、各種メーカー様向けの新サービスで、当店の車両及び備品、ライダーを御社企画で利用しませんかという提案です。うちなら必要なものがほぼすべて揃いますし、役者さん、演者さんの乗車シーンの代役やモデルを用意することも可能です。自分が制作側だったら、こういう風にワンストップですべてを引き受けられる会社があったら便利だなと思ったんです。まだ提案を始めたばかりですが、これからどうなるか楽しみです」

なんだかここに来るだけで何か面白いことに出合えそうな鈴木オート。この原稿を読んで一度行ってみたいと思った方もいらっしゃるはず。ただし、すべて一人でこなす鈴木さんは、納品や買い物などでお店を留守にすることもあるそうだから、来店されるときは必ず事前に電話で予約して欲しいとのことだ。

Photo/Shigeru Tokunaga

記事で紹介されたアイテム

商品詳細はこちら
ゼロフィニッシュ

取材協力

鈴木商店
東京都西多摩郡日の出町大久野4270
電話:042-518-2162
営業時間:10:00~19:00
(ご来店の際は、要電話予約)
定休日:不定(イベント開催時など)
https://www.facebook.com/masahiko.suzuki.180

関連記事

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。