整備が行き届いた、美しいマシンだけがスタートラインに立てる。

2021年の今でこそ「NSRチューニングの人」というイメージが強い、ゲズンハイト店長の伊藤章人さん。
しかし自らを「なんでも屋」と言い切る、腕も気風もいい彼が大切にするのは、“ちゃんとした整備”だ。
そんな彼の目にゼロフィニッシュはどう映るのか──?

目標はあの“8耐”への参戦

80〜90年代にバイクのシートの上で青春を過ごしたライダーであれば、その名を知らない人はいないだろう。「NSR250R」。ホンダのレーシングスピリットが遺憾なく詰め込まれた、公道用ハイスペックマシンだ。

2021年現在、そのNSRが人気を呼んでいる。生産から約20年が経過した2ストV型エンジン搭載のオールドタイマーにファンが望むのは、淡いノスタルジーか、ヒリヒリするようなレーシングマインドか。

しかしいまのブームが起きるよりもずっと前、そのNSRに質の高いチューニングを施していったことで徐々に全国へ知名度を拡げていったショップがある。その名は「モータークラブ・ゲズンハイト」。オーナーの伊藤章人さん自身もかつてはNSRに跨がっては熱心にレースに参戦、表彰台に上がることもしばしばだった。

若いころからサーキット通いを続けてきた伊藤さんには、2つの大きな夢があった。自分のバイクショップを持つこと。そして、レーシングチームを持つこと。念願のショップは2005年にオープンさせ、平行しながらチーム運営も積極的に行ってきた。ここ最近、ライダーとしてサーキットを走ることは少なくなったものの、チーム監督として変わらずさまざまなロードレースに出場し、実績を多く残している。

その伊藤さんが現在目指している次の“頂”、それはあの「8耐」だ。

つい15〜16年前まで農機具の整備士だった伊藤さんは、いかにして8耐参戦を志すようになったのか。幼少のころまでさかのぼって話を聞いてみた。

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父が出したさりげないパス

はためにはごく普通の野球少年だったかもしれないが、正直、そこまで熱を上げて没頭していたわけでもなかったかな……、そう伊藤さんは中学生のころを振り返る。嫌いではないが、すべてを捧げるという感じでもなかったらしい。

「そんなあるとき、父がいきなりヤマハのSRX-4を買って自宅に乗って帰ってきたんです。そのとき生まれてはじめて、バイクという乗り物を身近に感じました。それまではぜんぜんバイクに興味なんてなし。当時、放課後の部活で野球をやっていましたが、そんな野球もふくめて、夢中になっているものなんて他にありませんでしたし。

父はもう他界しているので確かめようもないですが、どこか定まらないフワフワした僕を見かねた父が出した、もしかしたら『こんな面白いノリモノもあるんだぜ』というさりげないパスだったのかもしれませんね(笑)」

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放課後はPW50に乗ってモトクロス

その後中学2年生のとき、伊藤さんは学校の期末試験の“上位成績”を交換条件に、ヤマハPW50を買う約束を父に呑ませた。つまり、あっという間にバイク熱に侵されてしまったわけだ。

是が非でもバイクを手に入れたかった伊藤少年だったが、残念、事前に掲げた目標の順位にはひとつだけ足りなかった。

「気落ちしたのも束の間、それでも父はバイクを買ってくれたんです。いま思い返せば甘い話ですが、それでもめちゃくちゃ嬉しかったことは今でも忘れられません。

もちろん免許年齢には達していません。だから走らせられる場所といえば、自宅の裏にあるだだっ広い野原です。荒れ放題の空き地も、雑草をかき分けながら1年間ひたすら走り倒すと……なんとなくそれっぽいオフロードコースになってくるという(笑)。

野球部の部活を終えた放課後、PWに乗ってグルグルグルグルと飽きもせずにそのコースをひとりで走り回りました。疲れているはずなのに、それはまったく感じていない。楽しかったなあ」

そのとき伊藤さんの父は、熱心に走り込む息子の様子をただ遠巻きに見守っていたという。

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レースデビューを夢見てYSRをゲット

いつの頃からか、バイクに乗りたい同級生たちを空き地に集めては、ストップウォッチを片手に握りしめてのタイムトライアルが始まった。

「友だちと夢中になって、誰が最速かを競いましたね。ベストラップのホルダーはもちろん僕。そりゃもう鼻息荒かったです(笑)。トップになる楽しさもしっかり肌身に感じていました。

でもそうこうしているうちに、バイクがどういう仕組みで動くのかを知りたくなってきたんです。そこで父が持っていたモンキーを“標本”に分解を始めるわけですが、チューボーのお約束で……けっきょく元に戻せなくなるという」

意を決し、地元の高校に進学するタイミングで父に伝えたのはレースのことだった。「ミニバイクのレースに参戦してみたい──」と。

「またもや試験の順位を条件に、レース活動を認めてもらおうとしたわけです。図々しいですよね。でも今度はさらに勉強を頑張りました。そして見事に? 目標をクリアすることができました。念願だったYSR50! をゲットです」

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ずっと速かった本気のライダーたち

バイクに乗りたい普通の高校生であれば「まず免許を取らなくちゃ」となるが、伊藤さんの場合は中型免許の取得よりも「はやくレースに出たい!」という気持ちの方がずっと優先されていた。

けっきょく高校生活の終わりにやっと中免を取りはしたものの、それは「いちおう」取っただけの単なる資格。18歳の情熱は、ブレることなくサーキットで速く走ることだけに向けられていた。

「ハイスクールライフはレースとともに幕開け! でしたね(笑)。

毎週末に、つま恋のサーキットで1日中走っていました。走るのも整備するのもの自分ひとりでしたけれど、当時は世話を焼いてくれる先輩もたくさんいたので、いろいろと助けてもらうことができました。

あのころは、真面目に『世界一のレーサーになりたい』と思っていた。家の裏の空き地で走っていたころは、正直誰にも負ける気はしなかったけれど、でも“本気のライダー”が集うミニサーキットではそうはいかない。自分よりもずっとずっと速い人間がわんさかいる事実に、ただただ途方に暮れました」

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サーキット通いをやめてしまった

そんな最中、いきなり転機が訪れる。

高校生病というか、他に楽しいことが見えてきちゃうというか、伊藤さんは突然サーキットから離れてしまった。あきた? あきめた? 見かぎった? 理由はいくつかあったが、どれもこれもたいしたワケじゃない。ただひとつだけ、「いつかはバイク屋さんになってみたい」という夢だけは忘れることができなかった。

高校卒業後、埼玉県にあるホンダ学園に入学する。

「ケニー・ロバーツ、フレディ・スペンサー、ワイン・ガードナー……グランプリシーンで輝く憧れの人物はみんなサーキットにいたので、同級生が夢中になる地元の峠なんて、まったく走りたいと思わなかったんです。ミニバイクのレースをやめたあとは、ホンダのCR125を買ってモトクロスを楽しみました」

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いまではむしろありがたい

専門学校の卒業が間近というタイミングだったが、伊藤さんはまだまだ将来を見定めることができていなかった。そんな折のことだった。

「『おまえだけには継がせない』

忌の際の父に、そう言われたんです。地元で事業をしていた父が急な病で倒れてしまうんですが、築いた生業をお前に渡しても、ろくなことにならないだろうと思ったんでしょうね。最終的には僕の弟が引き継いだんですが、それでよかった。むしろ今ではその判断がありがたいとさえ感じます(笑)」

伊藤さんの父、嘉雄さん。彼の生前の、長男に向けたなんとも厳しいひと言。しかしこれがなかったら今の伊藤さんはないだろう。そう思うと、世の中はじつに奇縁に満ちている。

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調子はいかがですか?

関東の二輪専売店でのメカニックへ経て、地元に帰って農機具の整備士に。伊藤さんはもともと好きだった機械いじりを仕事にした。バイクは趣味のひとつで、仕事はあくまで仕事。それも悪くないなと思い始めていた。

「プライベートの時間も持てて、平和な日常を送っていました。でもそんなあるとき、ホンダ学園でクラスメイトだった谷中芳弘さんにバイクショップを開くことを提案され、どんどんとその気になり……あとは一気呵成でしたね。はじめての起業に苦労しながらも、なんとか2005年のオープンにこぎつけることができました。ゲズンハイトの開店です。

当初は、とくに明確なコンセプトがあったわけではありません。でも気持ちの根っ子には『ちゃんとしたバイクをつくる』という信条がずっとありました。この“ちゃんとした”整備ができるようになるために、それまでの寄り道のような職歴があったようなもんですからね(笑)。

好調なバイクこそ、バイク本来の姿──。そんなメッセージを込めてのネーミングです。ドイツ語で『調子はいかがですか?』が、いまの店名の由来となりました」

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ストリートのベスト、サーキットのベスト

いま、伊藤さんは多くのお客さんに頼られている。「自分の愛車のメンテナンスやカスタムを、ぜひこの人にお願いしたい」。その気持ちが全国から寄せられるのだ。その高い知名度は、途切れずに続けてきたレース活動に拠るところも大きいだろう。

「それでもここまで来るのにだいぶ遠回りしたような気がします。オープンは32歳のとき。ショップを開いてからまだ16年しか経っていませんから。

もっぱらNSR屋というイメージが強いかもしれませんが、実際は新旧問わずさまざまな車種を手がけています。タイミングによっては店内にカワサキのZがズラリ、なんてこともありますから……イメージと違うかもしれませんけれど(笑)。

公道バイクとレーシングマシンの境目は明確にありますし、それらにジャストなセッティングが違うことはきちんとわきまえているつもりです。目的も嗜好もまったく違いますからね。

ストリートにはストリートの、サーキットにはサーキットのベストがある。

とくにサーキットでレーシングマシンは全開にしてこそ、できてこそ意味があります。フルスロットルできて、ナンボ。NSRをはじめ、あのころのレーサーレプリカほど目的にストレートで、走らせて楽しいジャンルのマシンはなかなかないですからね!」

それぞれのシチュエーションで、そのバイクが持っている本来の性能を“解放”できるマシンを作りたい。そのためにもまず「ちゃんとした整備」が何よりも大切だと伊藤さんは繰り返す。

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レースベース車はベース未満だった?

テイスト・オブ・ツクバ、筑波の選手権、もてぎ耐久、鈴鹿4耐……。数々の有名レースにチームとして参戦してきた伊藤さんがいま目指しているレース、それが8耐だ。

「ついにあの8耐出場を目指すぞと決めて、2017年式のCBR1000RRのレースベース車を購入しました。そのCBRのセットアップには、いろいろと思うに任せないところがあってとても苦労しています。

なによりもまずレースベース車はあくまでベースで、そのままではまともに走らない存在だということに気がつきました。最初は“素性のいいシンプルな構成のマシン”だと思っていたんですが、レース前提だとそれは当てはまらないんです。純正のHRCキットを組まないと、レースを戦うことはまず不可能でした。

そんなことも知らないのか、と言われてしまいそうですが、レースを生業としない一般の二輪店はこんなものです。そのことが分かっただけで僕にはとてもいい経験でしたね。まあ、お金がかかるのは痛いですが(笑)」

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美しさはスタートライン

伊藤さんが常日ごろ感じるのは、それが公道用のバイクであってもサーキット用のバイクであっても、クリーンな外観がキープされているマシンには気高さがあるということだ。「ちゃんとした整備」が施されているかは、ある程度外装で判断ができるらしい。

「キレイであること。それはとても大切なことです。美しい外装というのはまず、メンテナンス以前の、不可避のスタートラインだと僕は思っています。バイクがキレイじゃないとトラブルを発見することはできないし、それが迂回できたとしても、未然に防げることさえ見逃してしまうかもしれない。

ちゃんとした整備は、外装にもきっと現れるはずなんです。僕がフルカウルのバイクが好きなのは、もしかしたら、そのことをしっかり表現できるタイプの外装(ルックス)だからなのかもしれませんね。ピカピカにすること自体、すでに立派なメンテナンスなのですから」

プロはそんなときに、何を使うのか? それは出来の良いケミカル剤だ。伊藤さんに、シュアラスター・ゼロフィニッシュを使った感想を聞いてみた。

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ゼロフィニッシュには匂いがない

「いきなり本筋からちょっと逸れてしまいますが、ゼロフィニッシュはケミカル剤によくあるイヤな匂いがまったくしないのがいいですね。

これってけっこう大事なことで、日々の作業で無意識に避けてしまうことの原因が、思わぬところにあったりする。ほとんどの場合そのことに後から気づいたり、場合によっては気づかないまま過ごしていることさえあります。

たとえば工具を使うときもそう。それほど意識はしていないにもかかわらず、使いにくい工具を使わなきゃいけない作業は……なんとなく後回しにしてしまいがち。その不合理さは、僕みたいに個人でお店を切り盛りしているメカニックにとってはより切実です。誰も作業を代わってくれないのですから」

可能なかぎり身の回りのツールは、使いやすい納得のいくもので固めたい。プロであればみんなが感じていることだと伊藤さんは断言する。

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ゼロフィッシュとともに、真夏の鈴鹿へ

「僕にとってゼロフィニッシュの使いどころは2つあります。

ひとつは整備やチューニング、カスタムが終わったバイクの、お客さんへの納品時ですね。これはたぶん喜んでもらえるでしょう。本音を言えば、もともとキレイなバイクほどもっと艶出ししたくなる。これはまあ、人情かも(笑)。

ゼロフィニッシュが作ってくれる艶は、端的に言うと、いやらしくないんです。ギラギラさせるだけではない、シットリとしたほどよい質感が表現できるのがいい。これって意外に難しいことですよ。それが持続できることの気持ち良さは、磨き好きなライダーだったらきっとうなずいてくれると思います。

そしてもうひとつがサーキット。見栄えのいいレースマシンは実際にも調子が良さそうに見えるし、パーフェクトに整備を施した最後の証としての“艶”は、レーサーにもメカニックにも、そして観客にも訴えるものがきっとあるはず。美しいマシンは詰まるところ、速い。僕はそう信じています。

エンジンオイル、タイヤかす、昆虫類……サーキットで付着する汚れには、一般公道でついてしまう汚れとは別種のしつこさがあります。それらを短時間の制限のなかで、最大効率でクリーンナップするためのケミカル剤がゼロフィニッシュ。これはうちのお客さんたちにもオススメできる商品ですね。真夏の鈴鹿サーキットに持ち込める日がいまから楽しみです」

2020年の8耐はコロナ禍で開催中止になってしまったが、伊藤さんの8耐出場への筋書きは途切れていない。クリアしなければいけない課題はまだまだ多い。それでも諦めないことには、ハッキリとした理由がある。

「こんなオレたちでも8耐に出られるんだぜ!」

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photo:高柳健 text:宮崎正行

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ゼロフィニッシュ

取材協力:MOTOR CLUB GESUNDHEIT

御前崎灯台にほど近い、静岡県牧之原市にガレージを構える「モータークラブ・ゲズンハイト」。携わるバイクはみんな本来の姿に戻したい、完全なコンディションに整備したいという信条をかかげ、店名に「調子はいかがですか?」の意味をドイツ語で込めた。その名を全国区にしたNSR250のチューニングをはじめ、国内のロードレースに参戦するライダーをサポートする。
静岡県牧之原市菅ヶ谷250-1
TEL: 0548-52-5707
https://mc-gesundheit.com

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