「EXECTIVE’S Choice――ゼロフィニッシュだけあればいい!」Vol.3
モトコルセグループ 代表取締役会長・近藤 伸さん

東名高速道路・厚木インター出口から約1分ほどの場所にあるMOTO CORSE Museo(モトコルセムゼオ)。

ドゥカティディーラーを3店舗(ここMuseoとDucati Lifestyle TokyoDucati Saitama)展開し、ビモータ、アヴィントン、バイルスといった超高級輸入車や、STM(スリッパークラッチ)、Capit(タイヤウォーマー)など輸入カスタムパーツ、そしてモトコルセ・オリジナルのコンプリートカスタム車やカスタムパーツを取り扱うモトコルセグループの総本山だ。

イタリア語でミュージアムを意味するムゼオと名付けられただけあり、店内にはモトコルセが扱う、まるで宝石のように美しく人の目を捉えて離さない輸入車および輸入パーツ、そしてオリジナルマシンとパーツが並び、ちょっとした異空間的雰囲気を漂わせている。

とはいえ、店構えは普通の輸入車ディーラーで、足を踏み入れにくい感じは一切ない。店内に入って周囲を見渡すうちに、だんだんその空間のこれまで出合ったことがないような凄さが伝わってくるという感じだから、入店を臆する人はいないだろう。スタッフの明るい対応も、銀座のブランドの路面店のような高級店にありがちな緊張感をお客様に感じさせない所以だろう。

「私どもが取り扱っているモノがすべて、ここに来ていただければ見られるようにしています。お客様に実際にご自身の目で見て、手で触れていただき、バイクやパーツの美しさや一種の凄み、素晴らしさとワクワク感を体感していただきたいと思っています」

そう語るのはモトコルセグループの代表取締役会長の近藤伸さん。

会長という肩書きを聞くと、オフィスでPCに向かってグループの経営状況を日々、粛々と確認している経営者然とした姿を想像するかもしれないが、近藤さんはさにあらず。

サーキット走行会やイベント、自社のツーリングなどには自らバイクを操って参加し、自社で作成したオリジナル・カスタムマシンの出来や改良点を確認し、お客様とダイレクトに触れ合い、次にモトコルセグループでやるべきことを常にその目で、身体でリサーチしているのである。

ひと頃で言ってしまえば、超アグレッシブな行動派経営者。

ただ、近藤さんの真骨頂はそのアグレッシブさではなく、いいモノ、美しいモノ、優れているモノを見極める審美眼で、それを多くの人に幅広く伝えたいという熱い気持ちだ。

モノに対する厳しくも的確な目を持つ近藤さんは、ゼロフィニッシュをどう感じたのか。厚木のモトコルセムゼオでお聞きした。

東名高速・厚木インターの近くにあるモトコルセグループの総本山がMOTO CORSE Museo(上の2点)。一見、普通のドゥカティディーラーだが、店内はモトコルセが扱う世界の高級輸入バイクやパーツなどが所狭しと並ぶ。左下はアパレルを豊富に取り揃えるドゥカティストアのDucati Lifestyle Tokyo、右下は同じくドゥカティストアのDucati Saitama

背伸びしてでもいいモノを身に付けたかった

大阪で生まれ、その地で中学生となった近藤少年は、家の近所にあったライダーの集まる服部緑地にバイク見たさに自転車で通うようになり、自然とバイクへの興味を持つようになった。そして、16歳になって免許を取得するのだが、取る前にすでにカワサキ・750SS(輸出仕様のブルーだったという)を手に入れていたほどバイクに熱を上げていた。

18歳になってクルマの免許を取得すると、バイクからは遠ざかることになったが、それでもバイクは気になる存在で、ショップにバイクを見に行ったりすることは続けていた。そして、奈良県にあったオートショップフクイでビモータのHB3に出会う。

ヴァレリオ・ビアンキ(Bianchi)、ジュゼッペ・モッリ(Morri)、マッシモ・タンブリーニ(Tamburini)の3人の創設者の名字が社名の由来となったビモータ(bimota)社。日本メーカーやドゥカティのエンジンを完全オリジナルの車体に搭載したマシンを作り上げるカロッツェリアとして1970年代に創業。昨年、カワサキが資本参加したことで話題を呼んだ。写真は、近藤さんとビモータのかかわりの端緒となったHB3。ホンダのCB1100のエンジンを、完全オリジナルの車体に搭載している

「とにかくキレイで、作りや仕上がりもほかのバイクとは全然違う。単純な言葉ですが、まるで芸術品のようだと思いました」

現在に至るまで続く、ビモータと近藤さんの深い深いかかわりはこのときに生まれたのだった。

とはいえ、当時の近藤さんの関心はクルマであり、同時に身につけるモノ、持ち歩くモノに強い関心を抱くようになっていた。

「そのころの自分には似つかわしくないようなモノや、ブランド品を好んで買っていました。バランスなど気にせずに、とにかくいいモノ、上質なモノが欲しかったんです。いいモノが与えてくれる満足度の高さに魅かれていました」

バイクにしてもパーツにしても、近藤さんが現在、取り扱うモノはすべて『いいモノ』だ。卓越した性能に加え、誰もが納得する美しさを兼ね備えた一流品。それを選ぶ確かな目は、このころに身に付けられたのだろう。

2年連続でスナップオンのセールスチャンピオンに

社会人になった近藤さんは、自動車ディーラー勤務を経て、大手工具メーカー・スナップオンの商品を販売するビジネスを始めた。

「当時、大阪の江坂にあった東急ハンズでスナップオンの工具を見て、こんなに美しい工具があることを知り、4輪のバンに工具を積んで販売・修理をして回る『スナップオン・バンセリング』の仕事を始めました」

スナップオンの工具を月曜日から土曜日まで、曜日毎のコースを回りながら販売するのだが、自らほれ込んだ美しく、高いクオリティを持つ工具を多くの人に知ってもらいたいとの思いから、家に帰るのは連日午前2時というくらいそのビジネスに没頭した。その結果、2年連続セールスチャンピオンに輝いたのち、請われて横浜にあった本社に就職、バンセリングディーラーに同乗しトレーニングなどを行うフィールドマネジャーに抜擢された。

スナップオンの輸入元である本社で、ビジネスの組み立て方やプロモーションのやり方などを勉強した近藤さんは94年に独立。神奈川県の平塚にビモータ・SB6の専門店である「コルセ」を開業した。

「周りの人からどうせやるならハーレー専門店がいいんじゃないかと言われましたが、自分は好きなモノしか扱えない。だから、ビモータにしたんです」

好きこそものの上手なれと言う言葉があるが、その言葉通り、近藤さんのショップが作ったSB6のカスタムマシンは、当時、バイク雑誌が主催した最高速チャレンジイベントで著名ショップを相手に無敵を誇り、アメリカ遠征では0→1マイル加速・327㎞/hという公式世界記録を叩き出し、コルセの名前が一気に世の中に広がることになった。

当時の世界最高速を記録したコルセ・SB6SR。速さに加え、その美しさが高い評価を受けたマシンだ

世界記録を達成したのちに、当時、平塚にあったコルセ本社をビモータ本社のスタッフが表敬訪問した際の写真。右から、現在、モトコルセイタリアの代表を務めるダビデ・ジェンギーニさん、隣が現在のビモータ社の社長兼開発責任者でありTESI-H2にも採用されるハブセンターステアリングシステムを生み出したピエルルイジ・マルコーニさん、その隣が近藤さんで、現在もモトコルセの要職を務める大西さん、別井さんという創業メンバーが並んでいる

「ゼロフィニッシュはバイク磨きのいいパートナーになってくれます」

経営者として多忙な毎日を送る近藤さんだが、できる限りバイクと接する時間を作るようにしている。

「自分のところで作ったカスタムマシンは、自分で乗ってその良さを理解しないとお客様にもちゃんと説明できません。だから、サーキット走行会にも自走で行き、サーキットを走って性能を確認し、また自走でオフィスまで戻るんです」

ショップ主催のツーリングの際は、近藤さんが責任者兼先導役を務め、お客様との交流を深めている。

ドゥカティ・パニガーレV4Rの外装を脱ぎ捨て、同じくドゥカティのストリートファイターV4と同様のカーボン外装を身に着け、サスペンションやブレーキ、ホイールなどに超一流品パーツを装着したモトコルセオリジナルのNVC V4(コンプリート価格・1248万円)で元世界GPライダーである青木宣篤さんが開催しているマンツーマンのライディングセミナーである「アオキファクトリーコーチング」に参加

ショップ主催のツーリングには、責任者兼先導役として参加。お客様とのダイレクトコミュニケーションをとても大事にしている(前列右端が近藤さん)

バイクを美しく保つことにも、近藤さんはとことんこだわる。

「自分の乗るバイクだからこそ、見えないところまできれいにしたい。走行会の待ち時間に、ブレーキレバーの裏側とか、束になったホース類の隙間とか、それこそ指がなかなか入らないところを、爪がはがれて血が出てしまうくらいまで磨いてしまいますね。磨きマニアなんです(笑)」

そんな話をしながら、ゼロフィニッシュを手にビモータ・TESI-H2を磨き始めた。

「ドゥカティをはじめ、最近のヨーロッパ車はマット塗装が多くて、このH2のOZレーシング製のホイールもそう。マット面にも使えるゼロフィニッシュはいろいろな部分に気軽に使えて、とてもいいですね」

普段からご自分でバイクの手入れをする近藤さんだけに、慣れた手つきでTESI-H2を磨いていく。

「スプレーして拭きあげるだけでコーティングができ、変にピカピカ光ることもないところにとても好感が持てます。ピカピカ光るけど、ホコリも拾っちゃうケミカルもありますが、ゼロフィニッシュは磨いたあとにホコリもつきにくく、水もしっかりはじいてくれますから、タンクや樹脂部分など、どこにでも使いやすいです。拭き取りやすくて白くならないところも気に入りました。ガレージで好きなバイクを磨いて過ごすときのいいパートナーになってくれますね」

世界最高速を記録したSB6SRを当時、編集長を務めていたビッグマシン誌(内外出版社発行・現在は休刊)で試乗させていただいて以来なので、筆者Nomと近藤さんの付き合いはもう25年くらいになる

お客様が言った「趣味はモトコルセ」

冒頭で書いたように、輸入車の販売に加え、輸入パーツの販売、オリジナルパーツとオリジナルマシンの販売、さらにはオリジナルパーツの海外展開など、近藤さんが手掛けるバイクビジネスはとにかく幅広い。

そして、取り扱うモノすべてが超一流で、価格も当然それなりに高い。バイクビジネスを始めたときに選び、現在はモトコルセが総輸入元になっているビモータも、他バイクメーカー製のエンジンを完全オリジナルの車体に積んだ手作りのスペシャルマシン。誰もが簡単に手に入れられるバイクではないが、バイクを深く知れば知るほどその素晴らしさが理解できるようになる存在だ。

モトコルセが輸入販売するバイクは、どれもバイクファン垂涎のモデルばかり。カワサキ・H2のスーパーチャージャー付エンジンをビモータオリジナルのハブセンターステアリングシステム採用の車体に搭載したTESI-H2(左上・世界限定250台・866万8000円)、TESIと同じハブセンターステアリングを採用するVyrus(ヴァイルス)984C32V(右上・548万円~)、S&S製の空冷1647㏄エンジンを搭載したAvinton(アヴィントン左下・写真はモトコルセ仕様のCOLLECTOR EDITION-C・価格は要問合せ)、右下はスティーブ・マックイーンが映画・大脱走でスタントシーンを演じた際に乗っていたマティス・デザートレーサー(価格は318万円~)

それは、アルトやSTM、Capitなどのパーツも同じ。世界GPなどのレースの世界で認められた確かな性能と機能美を持つモノばかり。いまや海外展開も果たしているモトコルセのオリジナルパーツも同様だ。

モトコルセが輸入・販売するパーツはどれも世界のトップブランド。ブレーキシステムのAlth(アルト・左上)、スリッパークラッチのSTM(右上)、タイヤウォーマーのCapit(カピット・左下)はどれもが高性能と美しさを備えた逸品。右下はネジの頭部に9つの穴が刻まれたモトコルセオリジナルのドリルド・ビレット・タイタニウムボルト(DBT)。95年の発売以来、ロング&ベストセラーを続けている

「ご家族のケアもあるし、時間、天気、体調などいろいろな要素が揃わないと普通の方はなかなかバイクに乗ることができませんよね。だからこそ、所有していること自体で高い満足感が味わえるようなバイクや、付いていることで嬉しくなるパーツ、しかも格段に優れた性能を発揮するパーツを提供したいと考えています。そういうバイクやパーツは、お客様がバイクと付き合う時間をより満足感の高い、濃密なものにしてくれると思っています」

モトコルセと聞くと、超高級車や高級パーツばかり扱う、ちょっと敷居の高いショップだと思っている方も多いだろう。しかし、そういうアイテムを取り扱うことでバイクライフをより豊かで濃いものにして差しあげたいという、ある意味、とてもシンプルな近藤さんの考えに基づいているのである。

「バイクを複数所有するお客様に、別のお客様が「趣味は何ですか?』とお聞きになったら、『趣味はモトコルセだよ』とお答えになった、そんなお客様同士の会話が耳に入ったことがあります。とてもうれしかったし、多くのお客様にそう言っていただけるようになりたいと思っています。そう言ってくださる方がおひとりでも増えるよう、ここモトコルセムゼオには私どもが取り扱う商品を可能な限り展示していますから、ぜひご来店いただいて、見て、触れて、世界の一流品の素晴らしさを感じ取っていただきたいと思います」

長年バイクに乗っていても、まだ触れたことのないような深くて濃い世界が確かにここにはある。その素晴らしさに触れないのはとてももったいないことだと思う。ただし、もし溺れても当方は一切関知しないので悪しからず。

PHOTO:徳永茂/MOTO CORSE

記事で紹介されたアイテム

取材協力:モトコルセ ムゼオ(MOTO CORSE Museo)

神奈川県厚木市酒井3011番地
電話:046-220-1711
営業時間:10:00~19:00
定休日:火曜日
https://motocorse-museo.jp/

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