
春はお別れの季節です!?
目次
ライフスタイルと同じ目線のクルマ選び
新車、スポーツカー、実用車、SUV、など、クルマ選びは十人十色。
ワタクシ、ジェイ奥村は、もっぱら自分の年齢(1969年製)より少し上の年式のクルマを選んでいます。気がつけば、音楽、映画、ファッションなどと同じく、好きな時代のクルマばかりになっていました。
もちろんクルマとしても興味があります。さらに先祖帰りし、約80年以上前のオースティン・セブンが我が家最古のクルマです。

1931 Austin Seven RM Saloon

1936 Austin Seven Special
実際、そうしたクルマを手にして、あちこち検証するとクルマは100年間、何も変化無いですよね(大きく見ればですよ)。
ワタクシの仕事も同じです。写真も150年の歴史から、オートフォーカスにはじまり、デジタル化という激変がありました。そして、ワタクシたちの大好きなクルマもハイブリッド、そして将来的には完全電気化となりそうです。いま我々は、いろいろなことの間にいるのも面白いですね。
毎年、たくさんのクルマが廃棄され、生産されていますが、すでに存在しているクルマを使い続けるのも、エコではないかなというのがワタクシの持論です。実際にクルマ1台の生産エネルギーと廃棄エネルギーとのバランスを追求したことはありませんけどね。
そんなクルマ選びをしているワタクシの楽しみ方は、日常的に旧いクルマを使うこと。遠方の取材にも自分より年上のクルマと出かけます。よく心配されますが、もちろん、壊れることもありますよ(笑)。でも、それは機械なので仕方ありません。半世紀も実働していたクルマです。壊れることがあっても、いま、このタイミングで消耗してしまったんだなという解釈をしています。
と言いつつも、超前向きで楽観的な性格のワタクシですが、クルマが壊れた時はため息ばかりついているという、妻の証言があります(笑)。
話が脱線しましたが、いまナンバーをつけている3台の普通車は、それぞれ年間1万kmは走行しているので、日常的な使用にも使えることは理解してもらえるでしょう。

1963 MORRIS 1100

1964 FORD ANGLIA

1981 BLMC MINI VAN
そんな普段使いをしている我が家の旧いクルマたちのなかでも、一番年式の新しいのはミニです。5年前に知人から譲ってもらいワタクシの手元に来ました。
屋根は、大雪によるガレージ倒壊で、見事にチョップされており、ちょっと、そのままで乗るには気が引けます。
そこで一大決心をしたワタクシ、この際だから、凹んだ屋根の修理だけでなく、塗装を剥離してサビなどのダメージも除去してしまおう。そうした時に知ったのが、こちらです。
まだまだ、日本ではまだ馴染みのないものでしたが、航行速度に影響を及ぼす船艇に付着した、フジツボなどの除去。建物へのスプレーによる落書きにも、母体へのダメージを与えずに、塗装のみを剥離するウエットブラスト。
手の入らない部分のサビも綺麗に除去できるという、この画期的なシステムは、すでに欧米ではポピュラーなレストア時の剥離方法だそうです。
そのシステムを“パシフィックブラストジャパン”が導入し、全国に展開するというのもちょうど良いタイミングでした。
パシフィックブラストジャパンを訪ねる
さっそく、所沢インター近くの三芳町にあるパシフィックブラストジャパンを訪ねると、当時はテントの簡易作業場(現在はしっかりとした社屋になっています)でしたが、クルマを完全に裏返しにできるカーベキューも用意されています。
担当してくれた矢嶋さんも、過去ヒストリックカーイベントで、何度も顔を合わせていた旧知の間柄ということも分かり、この新しいシステムを試すことにしました。
そうは決めたもの、作業をするには、クルマをバラバラにする必要があります。
今は、倉庫を借りて、クルマたちは一箇所に集約していますが、このころは、自宅、実家、妻の実家、友達のおばあちゃんの家、そして、整備工場の置き場を月極で借りているという、どこに何を置いているのか、自分は何を持っているのか、もう訳のわからない状態でした。
幸い、月極で借りていた工場がパシフィックブラストからも近いので、ここでミニを裸にする作業から、ミニバンのレストア作業がはじまったのです。
バラバラにする作業は、結構スムーズに進行します。

エンジンを降ろし、内装や補機などを外すのも2日くらいで終了したような記憶があります。
パシフィックブラストでのボディ剥離作業中、ワタクシは機関を中心に作業します。エンジンは前オーナーさんより問題ないと言われていましたので、そのまま使いますが、この際なのでクラッチは新品に、手持ちの走行距離の少ないギアボックスに交換しました。
いよいよウエットブラストで剥離作業開始
そして、パシフィックブラストジャパンでのウエットブラストでの剥離作業も、正味3日で完全に塗装とサビや修理時のパテなど全てを剥離してくれました。
塗装剥離の途中に、いろいろと過去の修理なども検証するのも楽しい作業です。
もともとのオリジナル色はブラック。その後、ネイビーになり、現在の山吹色のような濃いイエローと、30年の間にボディは3度塗り直されています。
ボディ裏まで作業できるようにカーベキューにセットされたミニに、研磨剤と防錆剤入りの水を高圧で吹き当てていきます。作業しずらい手の入らない部分もウエットブラストにより完璧に処理します。
バンの場合、バッテリーは運転席の後ろにあるのですが、袋状になっており、サビや腐りやすい場所です。そうした手の入りにくい部分にも、ウエットブラストは有効です。
ボディの下地作りがはじまります
そして、完全に塗装とパテが剥離されたボディ。傷んでいる部分の鈑金作業をパシフィックブラストの伊藤さんが、修正してくれます。
本来、バンのフロントグリルはプレス成型のものですが、ワタクシのは取り外しできる別グレードのものになっていましたので、こちらもオリジナル通りに溶接してもらいます。


淡いグリーンにボディカラーは、そして、1950年代のフォルクスワーゲンのオリジナルカラーから選びました。
ミニのデビューも1959年なので同じ時代の色味ですね。俺はプラモデルの塗装が得意だからと、ボディは伊藤さんがペイントを担当し、ボディワークは完成し、組み立ての為にガレージへと搬入します。

いよいよ組み立て 1/1のプラモデル?

そして、借りてる工場で、ボディへのパーツ組み付け作業を始めます。
仕事の休みの日は工場へ通い、部品を取り付けていきます。
配線を含めてブッシュやゴムパーツなど消耗品はすべて新品を用意します。クラシックミニを筆頭に、英国車は、こうした部品が現在でも安価で、入手しやすいのも魅力ですね。

部品も揃えて準備万端のつもりでしたが、注文漏れなどもポツポツ出てきます。そうすると、作業をサボってしまい、なんだかんだで、約1年かかって、ようやく完成させることができました。
1年かけて完成 路上へ!
品川の関東運輸支局にて、新規車検を取得し、そして登録です。
車検証とナンバーを発行してもらった時は嬉しかったですね。自分で組み立てたクルマです、より愛着も湧きます。
エンジン以外は、ほとんど新品パーツを組み込んでいます。新車のようなフィーリングにご機嫌です。となると、遠くの出張にも乗っていきたくなりますね。東北、近畿、東海、一番の遠出は山口まで出かけました。





以前からの愛車、アングリア、モーリスに加えてバンの3台を交互に、仕事を含めた日常生活を使い分けます。年間を通して多く開催されているクラシックミニのイベントはもちろん、バンの出番です。
アウトドアでも、サルーン以上に存在感をアピール。
そして、サーキットでのサポートカーとしてもバンはお似合いです。戦前車での走行時にも、マスコットカーとして活躍してくれました。



2回目の車検の時は、シャフトブーツが検査直前で切れてしまい、大急ぎで家に帰り玄関先でドライブシャフトを抜き、交換作業をしたことも、懐かしい思い出です。


そしてお別れがやってきました
クラシックミニの世界ではバンも、エステートモデルと同様に“長モノ”と呼ばれ、昨今人気上昇しています。
クラシックミニに乗る友人から、ミニ仲間が“長モノ”を探していて、なかでもバンが希望で、ワタクシのクルマに興味があるという連絡を受けたのです。
バンの見学に、倉庫を訪ねてくれたのは、10年間、インジェクションモデルに乗っていたという佐藤さん。
“ITO GAKU”というバッグを中心としたハンドメイドのモノ作りをしている人です。
ご自身のライフスタイルとマッチしたバンに乗るのが、長年の夢だということ、そしてワタクシのバンを気に入ってくれたそうです。
積極的にクルマを売ることのないワタクシですが、過去に手放したクルマたちも僕以上に大切にしてもらっています。
なんとなく直感で、佐藤さんもバンを大切にしてくれそうなので、お譲りすることにしました。
最後のミニの洗車をし、マンハッタンゴールドを使って磨きあげます。

今まで手放したクルマたちと同様に、イベントなどで僕以上に大事にされているバンとまた会う日までしばしのお別れです。
取材協力
パシフィックブラスト ジャパン
埼玉県入間郡三芳町上富1184-2
TEL: 049-265-7333
公式ホームページ 公式Facebook 公式YouTube
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本業はフリーランスとして活動中のスチールカメラマン。愛車は1931年Austin Sevenから、1964年のFord Angliaなど、旧いクルマばかりを10台あまり所有し、日常生活はもちろんのこと、遠方への仕事にも使用。趣味のヒストリックカーレースでは、戦前車からスポーツカー、ツーリングカー、葉巻型フォーミュラーカーまで乗りこなす。そうした経験から自動車専門誌や、雑誌での特集記事などの執筆も行い、半年に一度、雑誌「The Vintage Wheels」の編集長として、旧い2輪車、4輪車の魅力を発信中である。
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