オリンピックディスタンスからアイアンマンへ -プロトライアスリート山下陽裕選手-

今年宮崎で開催された日本トライアスロン選手権では16位と、国内トップクラスの成績を残しているプロトライアスリート山下陽裕選手。シュアラスターで自転車ケミカルの製品提供を通じてサポートしているトップアスリートの一人だ。埼玉県の荒川近辺を拠点に活動しているため、荒川を走るプロサイクリストとも親交があり、なにより自転車好き。そんな山下選手にトライアスリート目線でシュアラスター製品をどう使っているか?また今後の夢や目標をインタビュー。

スイミングからトライアスロンへ

今日はお忙しいなかありがとうございます、今年の日本選手権も終わりシーズンオフに入ったところかな?

はい、オフには入ったのですが、来年はロングディスタンス(通称アイアンマン)にもチャレンジしたいので休みもそこそこにしてすぐにトレーニングを始める予定です。

山下選手
プロトライアスリート山下陽裕選手

なるほど、大きなチャレンジだね。ではまずトライアスロンを始めたきっかけから聞かせてもらえますか?

子どもの頃近所のおじさんがトライアスロンをやっていたので、そういう競技があるということは小学生くらいから知っていたんですよ。また、たまたま住んでいた地域でデュアスロン(ラン→バイク→ラン)という競技があって何度か出場しました。ただその頃は水泳が大好きで高校でも頑張るために水泳部が強い高校を選びました。そこで偶然当時トライアスロンのトップ選手だった山本良介選手(2008年北京五輪日本代表)に出会ったんですよね。一緒に練習させて頂いて選手としての強さはもちろん、振る舞いのかっこよさや兄貴分的な人間性に惹かれて、一気にトライアスロンに興味がわいてきたのがきっかけです。

山下選手

ではそのまま高校生からトライアスロンに転向したんですか?

実際に始めたのは大学生からです。高校では水泳に専念していて、いざ卒業して進路をどうしようかと悩んでいたときに水泳部の監督と話す機会があり、そこでトライアスロンやってみたらどう?と背中を押してもらったことがトライアスロンを始める決心に繋がりました。

山下選手
スイムアップからバイクへ移るトランジション

大学はトライアスロン部で?

立教大学に進学したんですが、実はトライアスロン部はなくて笑。近くのクラブチームに所属して朝6時からスイミングしてその後大学で授業受けて、授業終わったら帰宅して、バイクやランニングの練習したり、、もちろん通学などの移動はバイクですから毎日30kmくらい乗っていましたね笑。流石に少し大変で毎日ヘトヘトでした。その後クラブチームの拠点が山梨に移ってしまうことになったので、自分は大学の施設を使わせてもらったり近くのトライアスロンスクールのメンバーになって個人でトレーニングを行っていました。

山下選手

なるほど、大学生なのに部活でやっていたわけではなく、当時からプロ選手みたいに個人でトレーニングしていたんですね。初めてトライアスロンのレースに出たのは?

2012年5月に開催された日本学生スプリングトライアスロン選手権ですね。大学1年生のときです。

山下選手

トライアスロン部に所属していなくて個人でも出られるんですね。

はい、そのあたりの規定は他の競技に比べると結構ゆるいですよね。トライアスロン協会の選手登録だけしておけば出られる大会なんです。出場規則がガチガチではなくそういうところもトライアスロンの良いところです。そんな感じで個人トレーニングを続けながら大学時代を過ごしていました。

山下選手

東京オリンピックを目指す手段としてのプロトライアスリート

当時から将来はプロトライアスリートになろうという目標はあったんですか?

いえ、プロのアスリートになろうというよりは、オリンピックに出たいということを第一に考えていました。プロになるのか、実業団に入るのか、どの手段がそのためには一番良いかというのは考えていました。アスリートにとってオリンピックってそれだけ魅力的なんですよね。

山下選手

目標に向けた最短距離がプロトライアスリートになること、という判断からだったんですね。僕も詳しくは無いのですが、アテネ、北京、ロンドン、リオ、と最近のオリンピックの日本代表選手は比較的年齢層が高めというか、他の競技が軒並み20代前半の選手がでている中でベテラン選手の選出が目立っていますよね。若くて体力があって、、というだけではだめな競技なのか?という印象がとても強いのですが、大学生でオリンピックを目標にしていた時点ではやはり直近の大会ではなくある程度経験を積んでから、というイメージだったんですか?

レースでのバイクパート

僕が大学2年生のときに東京オリンピックの開催が決まりました。2020年は7年後だから27歳。世界的にみたら20代後半からトップで活躍している選手が多いので年齢的なタイミングも良いし日本での開催。これは頑張って目指すしかないって思いましたね。
おっしゃるとおり勢いだけではやりきれない競技で、通常男子だと2時間弱の競技ですが全力で2時間はどんなに体力あってももたないんですよ。自分の能力を最大限発揮するために頑張り過ぎない時間をつくる必要があり、そのさじ加減は経験値がかなり大きなウェイトを占めます。そのためベテラン選手のほうがレース運びという面では部があります。トライアスロンでは上手にレースをこなせる人が勝てるんですよね。もちろんそれに伴う実力ありきですが。
スイム、バイク、ラン、をそれぞれタイムトライアルして一人で走ったら若い選手のほうがタイムは良いかもしれません。ただトライアスロンは集団レースで、日本選手権は50人くらいが一斉にスタートします。心身の限界に近いところで行われる心理戦や削り合いを力だけで制するのは簡単なことではありません。周りをよく見て駆け引きをしなければいけないですよね。レースが強い選手ってそのあたりの経験が豊富で勝負勘が鋭いです。そういう意味では結果的に近年のオリンピック代表は心技体のバランスが整ったベテラン選手が選ばれてきたのかなと思います。

山下選手

なるほど、そういう部分は自転車のロードレースにも似ていますね。若手で強い選手もたくさん出てきているけど、ログリッチやアラフィリップ、バルベルデみたいな選手もトップチームでいまだに優勝する。エンデュランススポーツはそういうレース経験や老獪なテクニックみたいなものが生きてくるんですね。

だから趣味で楽しんでいるアマチュアトライアスリートにも年齢層が高いし強い人も多い。40代、50代なんて現役バリバリな感じですからね笑。

山下選手

パリを目指しながらアイアンマンレースへのチャレンジ

いまは現実的にオリンピック出場という目標はまだもち続けているんですか?

正直なところ、コロナがどうにかならないと海外のレースに出場できなくて、現実的に考えるとパリオリンピックだけをモチベーションにどうにかしていくのは非常にハードルが高い。そして東京オリンピックを目指してレースしている中で感じたのですが、他の選手と競って結果をだしていくことよりも、自分のことに集中できた時のほうが結果が良かったんですよ。そういう経験もあって、今後はアイアンマンというロングディスタンスの競技にも目を向けて行こうと思います。アイアンマンは他の選手と競い合う競技というよりは設定したレースプラン通りに遂行できるかが一番大事である意味自分との戦い。次のパリも含めてオリンピック出場ももちろん諦めませんが、ハワイのコナで毎年開催されるアイアンマンレースで過去の日本人トップリザルトを塗り替えることも新しい目標に加えています。

山下選手
レースでのランパート

※ちなみにアイアンマンレースは、スイム4kmを45分、バイク180kmを4時間強、ラン42kmを2時間30分、と世界トップレベルでは7時間30分ほどで駆け抜けてしまう、まさに鉄人レース。

トライアスロンの魅力

そんな素人からすると過酷にしか見えないトライスロンやアイアンマンレースにはどんな魅力がありますか?

おそらくトライアスロンをやったこと無い人からすると過酷なイメージしかないんだけど、ちゃんと練習を積んでいけば意外とできちゃうんですよ。また、スイム、バイク、ラン、それぞれの種目のトレーニングをしてくうちに、たくさんの人や様々なコミュニティと関わりをもつことになります。それ自体もトライアスロンをするモチベーションに繋がります。コミュニティが広がり、みんなと励ましあいながらトレーニングを重ねることでレースを走りきれるようになりますよ。トライアスロンって、自分に打ち勝つことも魅力ですが、いろんな人とその達成感を共有できることも大きな魅力なんですよ。

山下選手
トレーニング中の山下選手

トライアスロンも趣味でやる方も増えてきてサイクリング同様事故もあったりしてニュースになることもありますよね。自身がトレーニングするときに安全対策はどのように考えていますか?

一番の安全対策は無理をしないことです。無理をするときは安全を確保された環境下でのトレーニングやレースだけですね。もちろん趣味で健康維持が目的だったりサラリーマンで怪我は絶対にNGな方はレースでも無理をしないほうがいいですが、心のどこかで余裕がある状態でいるように心がけています。周りが見えている状態でないと安全にトレーニングはできないと思います。溺れちゃう人、落車する人、ランで転んでしまう人、たくさん見てきましたがやっぱり余裕がなくなるとアクシデントがおきますね。僕自身も移動中に交通事故の経験があるのですが、その時は少し急いいました。アスリートとして失ったものは大きく、それからは事故に遭わない、起こさないという意識を強く持つようになりました。自分と相手のどちらが悪いとかではなく、事故に関わるといろんな人が悲しみますよね。

山下選手
トレーニング中の山下選手

趣味で楽しんでいるスポーツで事故にあって命を落としてしまうのが一番やりきれない。サイクリングやトライアスロンはどうしても公道を走ることになるので本当に「安全第一」ですよね、どんなに車が悪いって状況でもぶつかって死んでしまったら意味がない。僕もサイクリングコミュニティを主宰していてライドイベントを開催することも多いので、本当に交通安全は一番意識しているし、自分が余裕を持つことで回避する、おっしゃる通りこれが一番の対策だと思います。

トライアスリートの自転車メンテナンス

バイクの普段のメンテナンスはご自分でやっていますか?

ほぼ毎日乗っているのでバイクの状態が良いか悪いかって自分なりになんとなくわかります。なんとなくですが笑。なので、ちょっとおかしいなと思ったら出来る限りの処置をしてみて、その後必ずバイクショップに持ち込んでメンテナンスしてもらうようにしています。
もちろんパンク修理やタイヤ交換、ブレーキの調整など簡単なことは出来ますが、自分でなんとかしよう、っていうのはあまり良くないのです。バイクを診るプロではないので。そこはちゃんとしたプロにお任せするようにします。余談ですが、バイクショップに洗車をお願いするととてもきれいになりますしよ。自分で洗車していたとしても行き届いてない部分が絶対あります。バイクをお店に持っていくタイミングとしてはオフシーズンは3ヶ月に一回くらいグリスアップと点検をしてもらって、レースシーズンには1〜2ヶ月に一回は診てもらっているイメージです。レースの2週間前にはバイクメンテナンスを完了させておくことをオススメします。レース直前にパーツを変えるのはトラブルの元になりますよ。

山下選手

なるほど、そうすると洗車はご自身でもやっているってことですね。

はい、洗車は好きですね。トレーニングでどうしても汚れるので大好きな愛車はできるだけキレイにしておきたいです。雨の中走ったら必ずやりますし、荒川でよくある水溜りを走ったら帰って即洗車です笑。最低でも乾拭きと注油をやりますね。雨の日の翌日の彩湖や荒川を走る日は少し憂鬱です。絶対ドロドロになるので。またレース前点検でバイクショップで診てもらう前に自分である程度汚れを落として行きます。何故かというと、汚れたままショップに持っていくとメンテナンスの前に洗車から始めなければいけないので、そうなるとショップに余計な手間を取らせることになりますよね。時間もかかってしまいます。だからある程度はキレイにして持ち込んだほうがメンテナンスに時間をかけてもらえるのでオススメです。

山下選手

そんな中でシュアラスターの自転車ケミカルを使い始めて率直な感想を教えて下さい。一番良かったのはどれですか?

ゼロフィニッシュと、このマイクロファイバークロスですね。ゼロフィニッシュを使うと汚れがつきにくくなるし、汚れが付いたとしてもとても落としやすいくなります。普段からこまめに使っておくことで洗車するときに汚れが溜まっていないので楽ですね。
チェーンクリーナーは噴射力だけでもかなり汚れを落とせるので、もったいない使い方かもしれませんがクランクを逆回転させながらチェーンに吹き付けるだけで汚れが落ちるのでかなりの頻度で使っています。

山下選手
(左)ゼロフィニッシュ(右)チェーンクリーナー
お気にいりのマイクロファイバークロス

バイクシャンプーは、スプロケットに吹き付けて10分くらい放置してみたら、めちゃくちゃキレイになりました。水で流してみると汚れた泡が出てきて、おぉ〜ってなりましたね。最後に濡れたタオルでシャンプー成分をしっかり拭き取ってチェーンクリーナーを吹き付けて揮発させています。

山下選手
バイクシャンプー

ゼロシートは、輪行にとても便利です。トライアスロンって遠征が多いですし、荷物も多いのであまり洗車グッズって持って行く余裕がないんです。その中で場所を取らずに持っていけて現地でバイクが汚れたらさっと拭き取れる。これはかなり便利です。また、飛行機で海外や地方に行くときにはスプレー缶は持ち込みができないので、そんな時にも重宝します。なので、トライアスリートにはオススメの一品です笑。

山下選手
(左)ゼロドロップシート

チェーンルブは、ドライなので天候がどう変わるかわからないレースでは正直不安な部分もあります。ただし、完全にドライ環境であればとてもいいフィーリングです。回転が軽くなるような感じですね。脚への負担も軽くしてれます。また、多くのトライアスリートが室内のローラー台でトレーニングしていると思いますが、ウェットルブと比べてチェーンからオイルの飛散がなく駆動音も静かになるので、室内トレーニング時に変なストレスを感じなくて良いです。

山下選手
チェーンルブ

あとこのマイクロファイバークロス。ゼロフィニッシュなどのケミカルを使うときも便利なんですが、僕はお湯に浸して固く絞った状態でフレームを拭いています。泥あ汗はもちろん補給食のかけらだったりジェルだったり、ばっちり拭き取れます。トライアスロンのレースやトレーニング後ってかなりフレームが汚れることが多いので、そんな汚れも拭き取れるのでかなり重宝しています。

山下選手

なるほど、ありがとうございます。
トライアスリートって、失礼な言い方かもしれませんがバイクが汚い人が多いイメージです。もちろん海で泳いでからバイクに乗るとか、サイクリストと使用環境も違うので大変な部分もあると思いますが、山下選手のようにいつもきれいな選手もいるわけで。トライアスリートに向けて洗車のメリットとかオススメポイントはなにかありますか?

そうですね〜、ぶっちゃけおっしゃるとおりの状況だと思います笑。バイクが汚くても速いって人もいるのですが、速い選手のバイクはしっかり手入れされていますね。例えばチェーン周りがキレイだとペダリリング時の抵抗が減りますよね。バイクをキレイにしておくと速くなるっていうことは理にかなっているんです。
とはいえいきなり洗車しろ、って言われても難しいと思いますので、まずは「出来ること」から始めてみてください。例えば、まずはフレームをクロスで拭いてみるとか、乾拭きでもいいと思うんです。どんなクリーナーを使うかとはその後でいいと思うんです。チェーンも一度乾拭きしてみたらいいですよ。クロスが真っ黒になるのになかなか汚れが落ちない。そうしたらなんでだろう?と次の段階に進んで、クリーナーを使ってみようとか。そうして一歩づつ進んでいけば自然とバイク全体をキレイにできるテクニックが身につきますし、バイク自体に愛着も湧いて普段からキレイにしておきたいという気持ちに絶対なるはずです。
これはトライアスリートだけでなくサイクリストにも言えることかもしれませんね。特にトライアスロンは海で泳いでそのままバイクに乗って、海水と汗というバイクに良くないものがたくさん付いてしまいます。放置しておくとあっという間に錆びてきますので、まずはレース後に各パーツの汚れや水分を拭き取る、室内のローラー台でバイクトレーニングしたら必ずフレームを拭き掃除する、とかそのあたりをやっておくだけで全く違う状態になって各パーツも長持ちすると思います。

山下選手

なるほど、やはりサイクリストとトライアスリートでは使用環境の差もあるので、ケミカルの使い方も普段のメンテナンスも気をつけるところがちょっと違うかもしれませんね。きれいなバイクは絶対良い成績につながるのは間違いないと思うので今後シュアラスターではトライアスリートにも洗車の啓蒙活動をしていきたいので、そのときはご協力よろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

プロ選手としては子どもたちが「憧れる存在」でいたいので、成績ももちろん、見た目もとても大事かなと思っています。バイクも同じかと。僕が憧れていた選手はみなそうでした。きれいなバイクはタイムにも直結します。とはいえ何からしたらいいのかわからない方もたくさんいらっしゃると思うので、一緒に乗る機会がある時や、荒川や秩父山の中で偶然見かけたときは色々聞いてください。少しでもみなさんのお力になれればと思います。
あ、これは僕も気が抜けないですね、笑。

山下選手

日本ではまだメジャー競技ではないトライアスロンですが、日本一を決める日本選手権は毎年10月にお台場で開催されています。一帯の公道を封鎖してスイム、バイク、ランを間近でしかも都心で観戦できる数少ない機会です。興味にある方はぜひ一度足を運んで大きな声援を送っていただければと思います。特に目の前を通り過ぎるバイクのスピードは圧巻です。また山下選手や荒川近辺で活動していますので、彩湖を中心に早朝からバイクトレーンングをしていることも多いので、荒川サイクリストの皆さんはもしかしたらすれ違ったりしているかもしれません。今後はオリンピック出場だけでなくアイアンマンレースでの記録も狙うと公言していますので今後の活躍が非常に楽しみです。

取材協力

栗原coffee(栗原コーヒー)
埼玉県さいたま市桜区下大久保1168-3
営業時間 08:30〜16:00(ラストオーダー15:30)
定休日 月曜+不定休
tel.048-711-5911
https://kurihara-coffee.jp/

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