プロメカニックから学ぶ洗車の極意 -宇都宮ブリッツェン 塩川亮輔メカニック-

今年新たに産声を上げたサイクルロードレースリーグ「Japan Cycle League(JCL)」にて活躍する日本初の地域密着型プロロードチーム「宇都宮ブリッツェン」にてチームメカニックとして選手を支える塩川亮輔メカニック。
先日宇都宮で開催されたシュアラスターサイクルクラブのライドイベントで参加者の皆さんに洗車デモンストレーション行い、プロのテクニックや洗車時の注意点などをレクチャーしていただきました。そしてデモンストレーション後に塩川メカニックの自転車に対する思いやアマチュアサイクリストが自転車メンテナンスをする時の注意点などを改めてインタビュー。参考になることばかりなのでぜひ御覧ください。

シュアラスターサイクルクラブでの洗車デモンストレーション

洗車前の準備

・濡らしたくないライトやサイコンなど外せるものは全部外す
・洗車しやすいスタンドを用意する
・ホイールは前後輪ともに外す
・自転車ケミカルを用意
・ケミカルの使用で手が荒れるのと怪我防止のためにゴム手袋の用意

洗車の流れ

チェーン周り(チェーンクリーナー)
汚れが多い部分から洗っていくのでまずはチェーンなどの駆動系の部分からスタート。
チェーンに溜まった汚れを落とすために「チェーンクリーナー」を吹き付けて固まった汚れをある程度落とす。
そして付属のブラシでブラッシングしてチェーンの中の汚れをかき出していく。
合わせてプリーやクランクにもクリーナーを吹き付けてブラッシングで固まった汚れをおとしていく。

チェーン周り(バイクシャンプー)
クリーナーでチェーン一周の汚れを落とした後、バイクシャンプーを吹きかけて同様にブラシで汚れをかき出す。
バイクシャンプーはアルカリ性でよく汚れを落とすことができるが、成分が残ると機材にダメージを与えてしまうため
(水なし洗車の場合)
チェーンクリーナーの揮発性を利用して、もう一度チェーン全体にクリーナーを吹きかけてシャンプーの成分を落とす
(水あり洗車の場合)
シャワー状の水をチェーン全体にかけてバイクシャンプーの成分をよく洗い流す

フレーム
(水なし洗車の場合)

ゼロシートを使いフレーム全体を拭き上げていく。
洗浄成分と艶出し成分が入った使い捨てシートなので、フレーム全体から細かいところは指に巻き付けるなどして汚れが残らないように拭き上げていく。

フレーム
(水あり洗車の場合)

一度水をフレーム全体にかけてホコリを流した後、
バイクシャンプーをフレーム全体にかけてスポンジで泡立てながら全体を優しく洗っていく。
このとき、泡や水は上から下に流れていくので、フレームも上から洗っていくと汚れが下に流れていき洗いやすい。
水を使う場合、ヘッドパーツの周辺は水が中に入りやすく錆びやすいパーツもあるので極力濡らさず、水を掛けた場合は水分をよく拭き取ること。

フレーム
(水あり洗車の場合)

サドルやヘッドパーツには水をかけないように注意しながらシャワーで上からシャンプーを流していく。
高圧洗浄機の勢いだとフレームやパーツを痛めたり中に水が入るリスクが高まるので、水を使う場合はシャワー程度の勢いで使う。
また車の洗車同様、直射日光の下で水をかけるとすぐに乾いてしまいフレームに水垢が残る可能性があるので、曇りだったり日陰の場所など直射日光がない場所でおこなうのがおすすめ。
泡を流し切ったらウェスでフレームや各パーツ類の水分を拭き取っていく。

フレーム仕上げ(コーティング)
「ゼロフィニッシュ」をウェスに吹き付けて、フレーム全体をまんべんなく拭き上げていく。
洗浄剤とコーティング剤が入ったケミカルなので、多少の汚れであれば洗車しなくともこれ一本で吹き上げることもできるし、洗車時には仕上げとして使うことでフレームにコーティングの膜ができてツヤを出すこともできる。
マットフレームでも使用可能。

万能な一本「ゼロフィニッシュ」

チェーンへの注油
フレームや駆動系の水分を拭き取った後は、チェーンへの注油を行う。
チェーンのリンクがあるのでそこを目印として細かい油分が飛び散らないようにウェスなどをあてがって「チェーンルブ」を丁寧にスプレーしていく。チェーンは洗った後でもルブを指すと内部の汚れが溶け出して黒い汚れが出てくることがあるが、気になるようであれば一度ルブを拭き取ってサイドスプレーし直すと良い。

ウェスをあてがいチェーンルブをスプレーしていく

駆動系への注油
洗車をすることで、プーリーの回転部分やディレーラーの駆動部分などの必要な油分が流れてしまっている可能性があるので、ピンポイントでチェーンルブをスプレーしていく。また細かい部分に注油することで残っていた水分を追い出す効果もある。

ホイール洗浄
外しておいたホイールは、チェーン同様スプロケットに「チェーンクリーナー」を吹き付けて目立つ汚れを吹き飛ばした後、バイクシャンプーをかけてブラッシングする。最後に水を掛けて汚れやシャンプーを洗い流して水気を拭き取る。
※ディスクブレーキモデルの場合は、ローターにクリーナーや汚れがつかないようにローターをカバーやタオルで覆うなどしてから作業する。

スプロケットもブラッシングで汚れを落とす
水で洗い流して
水分を拭きとる

仕上げ
洗ったホイールをフレームに取り付けて、ギアを全段変速させてチェーンのオイルをスプロケット全体にもまわす作業をして総仕上げ。こうすることでスプロケットのサビ予防にも。

ホイールを取り付けて全段変速して完了

塩川メカニックに聞いた洗車の極意

自転車との出会い

子の権現などサイクリストなら一度は聞いたことがあるサイクルスポットがあるエリアで育った塩川メカニックは新卒で宇都宮ブリッツェンに入社して2年目の若きメカニック。
将来は自転車ショップを開いてみたいという夢を持つ塩川メカニックと自転車との出会いは中学時代まで遡る。近所で元プロ選手が営むサイクルショップがあり、そこのオーナーにお世話になりながら自転車ライフを楽しんでいたが当時から競技として取り組むつもりは全くなかったという。とはいえ大好きな自転車に関わる仕事をしたいと思い高校卒業後は渋谷にある「東京サイクルデザイン専門学校」に進学し、メカニック技術全般を学んだところ、縁あって卒業と同時に宇都宮ブリッツェンのメカニックとして就職することに。

塩川メカニック

プロとアマチュアの洗車の違い

現在は日々プロ選手のレースバイクのメンテンナスや洗車に取り組む塩川メカニックに、プロ選手との乗るバイクと我々アマチュアサイクリストが乗るバイクでの「洗車」の違いを聞いてみたところ、


プロは一秒でも速く走るためのバイクメンテナンスの一環としての洗車で、言ってしまえばキレイにみえるかどうかは二の次。逆にアマチュアサイクリストの皆さんはキレイにすることが最優先で、洗車はバイクメンテナンスのきっかけになるのでは?

デモンストレーション中も細かく説明してくれる塩川メカニック

とのこと。
確かにプロ選手と我々では自転車に乗る目的がそもそも違うので、洗車の意味も変わってくるのは当然のこと。そしてアマチュアサイクリストが特に注意してほしい点としては、

わからないところは触らない

これに尽きると言う。具体的にどういう意味なのかを聞いてみると、

絶対洗車はしたほうがいいけど、ただキレイにすることを追い求めてやりすぎると基本的な性能の劣化や自転車を痛めることに繋がるので、どこにどういうオイルが必要かと、基本的なバイクの構造やメンテナンス知識を持って取り組むことが必要。そしてその知識を元に洗車したらちゃんと必要なオイルを足して、駆動系がきちんと動くか確認して、という作業まで行いそれがメンテナンスなんです。

という答えが帰ってきた。言われてみると当然で、自転車をきちんと動かすことが目的で洗車をしているので、その基本的な知識もなくただ水やケミカルを使って洗うだけでは自転車自体を痛めてしまうという本末転倒なことにもなりかねない。

洗車で気をつけるべきポイント

また、今回は普段宇都宮ブリッツェンの選手が乗る「メリダ」のバイクではなく、あえて一番汚れが目立っていたイベント参加者のバイクを借りてビフォー・アフターがわかりやすいように洗車デモンストレーションをを行ってもらったが、その状態を見た上で気をつけるべきポイントとしては、

自転車からしたら汚れもケミカルも水分もどれも一緒で必要のないもの。必要なのは適正な場所にグリスやオイルをさしておくことでそれ以外は必要ないモノなんです。
なので洗車するときはきっちりと汚れを落とし、汚れ落としに使ったケミカルはちゃんと洗い流し、洗い流した水分もしっかりと拭き取る。
その上でチェーンやディレーラー、プーリーなど、自転車が本来の性能を発揮するために必要な油分をちゃんと補給する。
洗車作業は見た目をキレイにすることが第一目的ではなく、本体自転車の走りを良くするためのメンテナンスの一環ということを忘れずに取り組めば、結果的に見た目のキレイさや自転車自体が長持ちすることにつながってくると思います。
そして全て自分でやる必要は全くないので、できる範囲だけ自分で取り組み、あとはショップさんでプロのメンテナンスにおまかせするのも良い方法だと思います。

実際に使用しているシュアラスターの自転車ケミカル

とのこと。
実際にプロの現場で毎日作業に取組みある意味レースの結果を左右する重要な立場にいる塩川メカニックからの言葉は目から鱗。我々アマチュアサイクリストにとっては速さは二の次で良いかもしれないが、自転車のメンテナンスとはなんなのか?その中で洗車はどういう役割を持っているのか?を今一度考えて自分にあったスタイルで取り組むべきだなと感じました。

今回はシュアラスターサイクルクラブのライドイベントを「シュアラスター×宇都宮ブリッツェン」という特別な形で宇都宮森林公園で開催したことで、塩川メカニックによるプロの手さばきを披露して頂くことができました。
我々アマチュアサイクリストにとって、プロ選手と一緒にライドすることだけでもとても貴重な機会ですが、プロの洗車デモンストレーションまで体験できるのも大変貴重な機会です。
シュアラスターサイクルクラブのライドイベントは、毎回ゲストとのライドを楽しむだけでなく、自社で展開する自転車ケミカルを正しく使う方法を皆さんに伝えることで、より安全に楽しいサイクルライフを送っていただければという思いを込めて開催しています。毎月開催しておりますのでぜひ皆さんもご参加ください。

そして、シュアラスターとしてはユニフォームスポンサーとして自転車ケミカルの提供も行っていますので、多くの個性的な選手が所属する日本初の地域密着型プロロードチームとして活動する「宇都宮ブリッツェン」にも声援をお願いいたします。

取材協力

宇都宮ブリッツェン
https://www.blitzen.co.jp/

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